原題 | 12.12: The Day |
---|---|
製作年 | 2023 |
製作国 | 韓国 |
監督 | キム・ソンス |
脚本 | ホン・ウォンチャン、 イ・ヨンジュン、 キム・ソンス、 ホン・インピョ |
音楽 | イ・ジェジン |
出演 | ファン・ジョンミン、 チョン・ウソン、 イ・ソンミン、 パク・ヘジュン、 キム・ソンギュン、 チョン・マンシク、 チョン・ヘイン、 チョン・ドンファン |
1961年のクーデター以来、側近の一人の手によって殺害される1979年まで独裁政権を維持した朴正煕大統領暗殺事件の余波から始まるこの映画。
朴正煕大統領暗殺後、全斗煥将軍による悪名高い権力掌握は、軍事独裁政権終了後の韓国を更に8年間の混乱に陥れる。
ではなぜ、全斗煥が権力を手に入れたのか?
一時的に戒厳令が敷かれて首都は混乱しますが、見えづらい政権内部の権力争いでもあり、韓国の人も詳しくは実情を知らなかったようです。
これは「軍内部のエリート層 vs 『ハナ会』と言われる非エリート層の秘密組織」という構図が大きく関わっており、この対立が映画の主軸であり醍醐味になっています。
実際は軍内部でエリート層と非エリート層のどちらが “悪” だったのか定かでありませんが、全斗煥政権時に起きた「光州事件(『光州5・18』)」、「6月民主抗争(『1987、ある闘いの真実』)」の弾圧を見る限り、少なくとも全斗煥は “悪” だと示している。
だからこの映画では、”悪” が勝つと分かっている。
ファン・ジョンミン演じる全斗煥を阻止するチャンスは何度もあったはずなのに…
その後、全斗煥が国内にどれだけの惨状をもたらすかを知っていると、阻止できなかった “僅かな差の積み重ね” に絶望すら感じる。
だからこそ、首都警備司令官の李泰臣を含め、全斗煥に与しなかった登場人物を応援したくなる。
でも歴史は変わらないし、過去は変えられない。
なので、この映画は絶望に終わる。
ただ、”自己を犠牲にして抵抗した人達がいた” ということだけが、未来への希望になる。
史実を映画的に脚色していると分かっても、見ごたえのある凄い映画でした。
こういう映画を作ることができる韓国映画が羨ましい。
なお、冒頭で書いた「朴正煕大統領暗殺事件」の裏側については『KCIA 南山の部長たち』を観ると良く分かります。
(演出方法は全く違いますが、ストーリー的にこの映画はKCIA…の完全続編じゃないかというくらい、”続き” になっています)
つまり、『KCIA 南山の部長たち』⇒『ソウルの春』⇒『光州5・18』⇒『1987、ある闘いの真実』という順に観ると、1979年~1987年までの軍事政権の内紛・民衆への弾圧という流れを追うことができる。(この順で連続放送したWOWOWは素晴らしい!)
ちなみにこの映画の邦題「ソウルの春」は内容と関係のない酷い邦題。
同時期に高まりを見せていた民主化ムードを指す言葉ですが、この映画では民主化とは真逆のことを描いています。