原題 | Amadeus |
製作年 | 1984 |
製作国 | アメリカ |
監督 | ミロス・フォアマン |
脚本 | ピーター・シェーファー |
音楽 | ジョン・ストラウス |
出演 | F・マーリー・エイブラハム、 トム・ハルス、 エリザベス・ベリッジ、 ジェフリー・ジョーンズ、 ロイ・ドートリス |
1984年度のアカデミー賞で、「キリング・フィールド」「インドへの道」「プレイス・イン・ザ・ハート」に競り勝ち、作品賞、監督賞、主演男優賞など8部門を受賞。
主演男優賞はモーツァルト役のトム・ハルスではなく、サリエリ役の F・マーレイ・エイブラハム。この映画、主役はサリエリなんですね。ちなみに前にも後にも脇役俳優だったF・マーレイ・エイブラハムは、この映画でもエキストラだったのが、セリフ読み合わせ時の代役で演技力が認められ、主役に大抜擢。サリエリは不運でしたが、エイブラハムは強運の持ち主でした。
映画は奇怪で年老いたサリエリの “悔恨” で始まる。
サリエリって誰?、「モーツァルトを殺した」ってどういうこと? と想像力が膨らんだところに、奇妙な笑い声の “お子ちゃま” モーツァルトが登場する。その時点でこれはモーツァルトの映画ではないことが分かるし、その振り切ったキャラクター設定がこの映画を “記憶に留める作品” にしていることは間違いない。
観客は天才モーツァルトより、天才になれなかったサリエリの立場に近い。でもトム・ハルスがモーツァルトを演じることで、親近感を抱きがたいモーツァルトにも観客の同情が集まる。
でもこれはやはり、天才に憧れた凡人の “戸惑い” と “怒り”、そして “悲しみ” から “嫉妬” に変わるまでの人間ドラマであり、そういう意味で、描かれているのはきっと「我々」なんだと思う。救いなのは嫉妬の裏に “尊敬” があり、自らの行為への “怖れ” があり、最後は “悔恨” で終わる。そう、これは我々弱き人間を描いた映画なのです。
ただ、歴史は戻らず、モーツァルトは短命に終わる。
人生を走り抜いた未熟な天才モーツァルトもまた、身を削る努力を惜しまない一人の人間だったのかもしれません。