Away

原題 Away
製作年 2019
製作国 ラトビア
監督 ギンツ・ジルバロディス
脚本 ギンツ・ジルバロディス
音楽 ギンツ・ジルバロディス
出演

2024年アカデミー賞 長編アニメ映画賞を受賞した『Flow』を作り上げたジルバロディス監督のデビュー作。
『Flow』では、ラトビア発の製作費6億のセリフ無しアニメが製作費120億円のドリームワークス『野生の島のロズ』に競り勝つ快挙を成し遂げますが、この作品は2019年にジルバロディス監督が3年半かけて独力(!)で作り上げた作品。
『Flow』と同様にセリフ無し、異世界、サバイバル、魅力的な動物、ロールプレイング的な世界はここから始まりました。

この作品が「独力で作られた」と知らず、10年以上前のTVゲームのようなグラフィックで良く分からないストーリーだったとしても、100億を超える製作費のアニメーションと同じくらい深い感動を与えてくれ、観るだけで深く心を揺さぶられます。
劇場用アニメというハードルは高いものと誰もが思っていましたが、それを独創性と努力と才能があれば、たった一人で乗り越えられると証明しました。
手をかけた美しい風景のすぐ次に、手を抜いたか技術が無かったと思われる簡素なシーンが差し込まれたり、コピペと思われる同じフォルムをしたたくさんの動物が現れたとしても…

ストーリーの詳細は省きますが、最初は “鬱状態を脱しようと思い悩む人の精神世界” を描いているのかと思いました。
でも、もしかしたら単独で映画製作に挑むジルバロディス監督自身の精神状態を描いていたのかもしれません。
だから製作メンバーが増えた次作の『Flow』では、『Away』の一人旅から進化し、複数の動物たちが協力する物語になったのかもしれませんね。

アニメーションは実写に比べて余計な視覚情報がそぎ落とされるため、映像をストーリーに集中させることができます。
更に、ジルバロディス作品は簡素な描画に加えてセリフまでそぎ落としているため、観客は余計なことを一切考えず、極限までストーリーに目を向けることができます。
目を向けるというよりむしろ、”自然と脳に吸収される” 感覚かもしれません。
その心地よさというか、不思議さが際立つ、他の映画では味わえない視聴体験でした。

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