愛を耕すひと

原題 Bastarden
製作年 2023
製作国 デンマーク・ドイツ・スウェーデン
監督 ニコライ・アーセル
脚本 アナス・トマス・イェンセン、 ニコライ・アーセル
音楽 ダン・ローマー
出演 マッツ・ミケルセン、 アマンダ・コリン、 シモン・ベンネビヤーグ、 メリナ・ハグバーグ、 クリスティン・クヤトゥ・ソープ、 グスタフ・リン

北欧のヒース(荒れ地)を舞台にした映画は、どうしても暗く重くなる。
だからこれも、成功を目指す物語ながら、当然サクセスストーリーにはならない。
そんな寡黙で報われない主人公に、マッツ・ミケルセンが良く似合う。

英題は “The promised land” = 「約束の地」ですが、デンマーク語の原題は “Bastarden” で、英語でいう “Bastard” になる。
これは “ひどい奴” という意味もあるが、元々は “私生児” という意味。
映画の中では深く描かれていないが、恐らく主人公は私生児というルーツを激しく恨み、そのルーツに対して強烈な反骨心を持っていたのだろう。
それがシンケルとの因縁に繋がるが、主人公は表立ってそれを見せない。
だから分かりづらいでですが、題名が「私生児」なので、その葛藤がテーマだったのではないでしょうか。

「ヒースを開拓して貴族の称号を得る」。
それは彼の手段だったのか?目的だったのか?
貴族の私生児として生まれたことに対し、返り咲くことで誰かに復讐したかったのか?
それとも、「元は貴族のはず。だから貴族に戻るんだ。」という思いだったのか?
映画ではそこまで触れていないのでどちらなのか不明ですが、彼は貴族に返り咲く権利を手に入れながら、それを放棄する。
助けてくれたアン・バーバラとアンマイ・ムスを失い、恐らく “もう貴族になることに意味は無い” と悟ったからなのでしょう。

または、貴族にならずとも、”元は庶民で今は貴族の異母兄弟ヒンケル” を殺したアンを助けることで、ケーレンは目的を達成したのかもしれない。
似たような境遇なのに運良く父の元に置かれたヒンケルはケーレンにとってある意味 “理想” であり、でもその現実を目の当たりにして幻滅した。
しかし、ヒンケルを倒すことで、もう目的は達成されたんだと後になって気づく。
だからアンを助けに行く。そんな風に解釈しました。
そうすると題名は “The promised land” = 「約束の地」ではなく、やはり “Bastarden” が相応しいのだと。

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