| 原題 | Better Man |
|---|---|
| 製作年 | 2024 |
| 製作国 | アメリカ |
| 監督 | マイケル・グレイシー |
| 脚本 | サイモン・グリーソン、 オリバー・コール、 マイケル・グレイシー |
| 音楽 | バトゥ・セネル、 ロビー・ウィリアムズ |
| 出演 | ロビー・ウィリアムズ、 ジョンノ・デイヴィス、 レイチェル・バンノ、 ジェイク・シマンス、 スティーヴ・ペンバートン 、 アリソン・ステッドマン、 デイモン・ヘリマン |
1998年にベストアルバム『Greatest Hits』を買っていたのでTAKE THATは知っていましたが、ロビー・ウィリアムズを初めて知ったのは2000年のアルバム『Sing When You’re Winning』を買った時でした。
この時、悪童ロビー・ウィリアムズがTAKE THATのメンバーだったことを知り、「爽やか系ボーイズ・バンドにこんなメンバーいたっけ?(しかも結成から4年も!)」と心の底から驚いたことを良く覚えています。「稀代のエンターテイナーだけど長続きしないだろう」と思っていたのですが、90年代後半からソロで活躍しており、現在に至るまでヒットを出し続けているとは恐れ入りました。
そのようにロビー・ウィリアムズに何らかの思い出を持っている人にとっては、涙を流しながらこの映画を観ることになるかもしれません。
驚くことに主人公は “猿” です。
“猿の擬人化” なのかロビーの “擬猿化” なのか良く分かりませんが、映画製作のためのインタビューでロビーが「自分はずっと “猿” みたいなものだった」と語ったことをきっかけに、監督のマイケル・グレイシー(『グレイテスト・ショーマン』の監督)がロビー役の俳優をモーションキャプチャーで撮影し、CGですべて猿に変えてしまいました。
「さすがに途中でロビー・ウィリアムズ本人に変わるんだろう」と高をくくっていたら、このブログはすべてネタバレなので言ってしまうと、最後までずっと “猿” でした。
編集担当になったCG会社の女性が「普段はアクション系なのに、今回は急に “踊るサル” 担当よ!」と怒ってたくらい、ずっと “猿” です。
でも “猿” にすることで、伝記映画にありがちな “美談に仕立てました” 感が無くなり、”猿だから仕方ない…” と逆にフラットで自然な視点で観られるのです。
これは素晴らしい効果でした。
これからもすべての伝記映画は絶対に動物を擬人化して作るべきですね。
そこはワンダーランドだ
居心地がよく、人を批判しない
俺は仲間を見つけた
約束の地を見つけたんだ
最年少メンバーとしてオーディションで “運よく拾われた” 少年、ロビー・ウィリアムズ。
この時、若干15歳。
スターを夢見た少年にとって、グループは “最悪のプロデューサー” ナイジェル・マーティン=スミスに率いられていたとしても、そこは天国だった。
ナイジェルは ”身近に触れ合えるアイドル” という触れ込みで大量の女性ファンを招き入れながら、「濃厚接触禁止!」を厳守させる鬼だ。
結成直後から悪童ロビーの言動を憎んでおり、ロビーの脱退後、ナイジェルは執拗にロビーを2度訴え、2度とも勝訴している。
すべて幻さ
そこがイカれてる
辞められない
15歳にして異常な世界に入りびたり、欧州のトップアイドルに駆け上がった少年が正常な精神を保つ方が難しい。
同じく10代で世界を手に入れたイギリスの歌姫エイミー・ワインハウスがアルコールと薬物に溺れて命を落としたように(映画『AMY エイミー』参照)、ロビーもアルコールと薬物に溺れていく。(エイミーもトニー・ベネットなど相当上の世代の歌手を敬愛しており、フランク・シナトラを敬愛していたロビーと非常に似ている)
アーティストの転落人生など世界中どこでも日常茶飯事で、”目立ちたがり屋”、”過激な言動とジョーク”、”薬物中毒”、”メディアでの奇行” を兼ね備え、トラブルメーカーのイメージがつきまとうロビーにとって想像通りすぎる展開で、消えていなくなると誰もが思っていた。
だが、なぜか不死鳥のように復活し、今やソロ・アーティストではイギリス国内で歴代No.1の売上数を誇る。
これは本当に想像できなかった。
どうやって更生したのか?
生意気なメンバーは心を病み
グループも解散させて世間に叩かれた
でも実際ごもっともな話だ
俺は21歳でコカイン中毒でアル中
昔から予備軍だったと思うが
金を手にして早まった
だが俺はえらく負けず嫌いだ
ソロとして成功するあてなどなかったが
復讐心に燃えていた
映画では「All Saints」のニコール・アップルトンや家族に関するプロットを中心に描かれますが、更生できた理由は恐らく “自分自身” なのでしょう。
性格に難はあるが、マインドの部分でロビーには “最後の最後で踏みとどまれる力” があり、レジリエンス力が高かった。
酒とドラッグに溺れながらも反骨心が勝り、それらに負けなかった。
そして、何よりエンターテイメントの才能があった。
人は有名になった時、成長が止まる
だから今、俺は15歳
精神的にも大人になり、客観的に自分を見ることができ、彼は再生する。
“有名になれるはずなかった” 少年が夢を掴み、奈落に落ち、這い上がり、今度は自分の才能で昇り詰める。
ラストは劣等感の塊だった “猿” がタキシードを着てロイヤル・アルバート・ホールで敬愛するフランク・シナトラの「My Way」を歌い上げる。
ビジュアル的には奇妙この上ないが、”猿” が歌う姿になぜか涙するのです。
