ボレロ  永遠の旋律

原題 Bolero
製作年 2024
製作国 フランス
監督 アンヌ・フォンテーヌ
脚本 アンヌ・フォンテーヌ、 クレア・バー ピエール・トリビデク、 ジャック・フィエスキ、 ジャン=ピエール・ロンジャ
音楽 ブリュノ・クーレ
出演 ラファエル・ペルソナ、 ドリア・ティリエ、 ジャンヌ・バリバール、 エマニュエル・ドゥボス、 ヴァンサン・ペレーズ、 ソフィー・ギルマン

15分ごとに、世界のどこかで誰かがラヴェルのボレロを演奏している

誰しもが聞いたことのあるクラシックの名曲「ボレロ」。
その作曲家モーリス・ラヴェルを描いたフランスの伝記映画。
20世紀の人物なのでキャラクターは良く知られており、恐らく史実に沿ったストーリーですが、自動車事故により脳に障害を負った後半生がメインなので物語は少々分かりづらい。
ストイックで生涯独身を貫いた人なので、ラヴェルを取り巻く3名の女性(ダンサー、人妻、ピアニスト)+メイド1名との関係は、どこまで本当か良く分かりません。
ですが友人のピアニスト、マルグリット・ロンがボレロを含むラヴェルの作曲に影響を及ぼしていたというのは事実らしいです。
この映画でもそのシーンが出てきますが、いつもラヴェル邸に出入りしているので、途中までメイドの1人かと思っていました…
実際のメイドさんは、いつも “エナメル靴” を持ってきてくれる人ですね。
この “エナメル靴” がラストの小さな伏線になっていて、走って靴を持ってきたメイドさんに「もう必要ないんだよ」と言って自宅を去っていくことになります。

幼少期、ボレロは行進曲だと親に教わりました。
王の楽隊が遠くから近づいてくる様子を表しており、繰り返す中で楽器が少しずつ増えていくんだと。
それをずっと信じていたのですが、この映画には一切そんな話は出てこない。
それどころか、「産業化による連続的な機械音のイメージ」というまったくの想定外の説明に、後頭部を殴られたような衝撃です。
もしイダ・ルビンシュタインがいなければ、”ボレロ=情熱的” というイメージは存在しなかったのかもしれない。
(踊ったのはイダですが、ブロニスラヴァ・ニジンスカ(ニジンスキーの妹)が振付を考案)
それが後のモーリス・ベジャールの振付に繋がり、クロード・ルルーシュ監督の『愛と哀しみのボレロ』で一躍有名となる。
そういった協力者の存在と偶然が重なり、現在のボレロが形作られたのでしょう。

ちなみに映画に出てくるラヴェル邸が素敵だなと思っていたら、なんと本物の自邸でした。
現在はラヴェルの博物館になっているそうですが、撮影のために貸し出したそうです。

後日談ですが、ラヴェル家はモーリス以外に弟にも子供がいなかったため、ボレロを含む著作権は意外な顛末を辿り、まったく血縁関係の無い “カナリア売りの女性” の手に渡りってしまいます。2016年に著作権が消滅しましたが、それまでに莫大な著作権料がその女性(および夫と子供)に入り、億万長者となったそうです。

 

borero1