| 原題 | Entre tinieblas |
|---|---|
| 製作年 | 1983 |
| 製作国 | スペイン |
| 監督 | ペドロ・アルモドバル |
| 脚本 | ペドロ・アルモドバル |
| 音楽 | カム・エスパーニャ |
| 出演 | クリスティーナ・サンチェス・パスクァル、 フリエタ・セラーノ、 カルメン・マウラ、 チュス・ランブレアベ、 マリサ・パレデス、 セシリア・ロス |
ペドロ・アルモドバル監督の3作目は、まだまだパンク路線を突っ走ります。
舞台が抑圧の象徴 “修道院” とくれば、アルモドバル監督はやりたい放題です。
当然、尼僧は喫煙やドラッグを当たり前に嗜みますが、デビュー作が突き抜け過ぎたので、2作目以降、これでも徐々に落ち着いてきた様子が見て取れる。
普通の流れで突然差し込まれるユーモアが面白く、冒涜感は感じられずむしろ甘美なコメディを観ている “錯覚” に陥ります。
(「墜落尼」「ドブネズミ尼」「肥溜め尼」というネーミングで普通に呼ばれている登場人物がまず凄い)
90年代後半のシリアス&サスペンス調、2010年以降のヒューマン・ドラマのアルモドバル監督しか知らない人が観たら、こんなにパンクで過激で面白い人だったのかと驚くでしょう。
宗教的救済はますます無意味化し、救済すべき人々は徐々に減り、もしくは救済しようとしてもアフリカに逃げて食人族に食べられてしまう現在において、一体我々は何に救いを求めて生きていくべきなのか?
そう、ドラッグです! あるいは性別を問わない自由恋愛です! つまり自由です!
これは挑発ではなく、そういう時代がもうそこまで来ていることを示す芸術的表現なのです。
しかし、猫好きの人にとってはこの映画は悪夢でしょう。
冒頭で主人公のヨランダは綺麗な猫を飼っていますが、オーバードーピングで死んだ彼氏と猫を置いて日記を持って逃走します。
そこはぜひ、猫も連れて行ってください。
ところで、主人公の楽屋に押し入るシーンは『オール・アバウト・マイ・マザー』同様、『イヴの総て』のオマージュでしょうか。
なお、今回もアルモドバル映画の常連組、カルメン・マウラ、マリサ・パレデス、セシリア・ロスが出ています。
