フォードvsフェラーリ

原題 Ford v Ferrari
製作年 2019
製作国 アメリカ
監督 ジェームズ・マンゴールド
脚本 ジェズ・バターワース、 ジョン=ヘンリー・バターワース、 ジェイソン・ケラー
音楽 マルコ・ベルトラミ、 バック・サンダース
出演 マット・デイモン、 クリスチャン・ベール、 ジョン・バーンサル、 カトリーナ・バルフ、 トレイシー・レッツ、 ジョシュ・ルーカス、 ノア・ジュープ

どんな映画でも作れてしまうジェームズ・マンゴールド監督が、アメコミ2作の次に作ったのが “レース映画”。
3時10分、決断のとき』で組んだクリスチャン・ベールを再び起用し、初のアカデミー作品賞にノミネートされたレース映画に仕立て上げる。

この映画はもともと2010年頃から企画され、最初はマイケル・マン監督の予定でした。
しかしそれは頓挫し、後に『フェラーリ』として実現します。
その後、ジョセフ・コシンスキー監督がトム・クルーズを起用して製作するという計画がありました。
しかしまたまた頓挫し、『トップガン マーヴェリック』として実現します。
その時の仮タイトルは “Go Like Hell” で、これは本作中にマット・デイモンがホワイトボードに「7000+ GO LIKE HELL」と掲げるシーンに反映されています。
その後、同じジョセフ・コシンスキー監督でブラッド・ピットが起用される計画が持ち上がりましたが、これも頓挫して後に『F1 エフワン』として実現します。(『F1 エフワン』は2026年のアカデミー作品賞にレース映画として2作品目となるノミネートを果たしました)
というように、様々な変遷と分岐を経てこの映画は出来ています。

この映画は3つのプロットで成り立っています。
1つ目は世の中のあらゆるスポーツ、あらゆる分野で言えることですが、「親会社 vs 現場」です。
現場のことは現場が一番分かっていますが、親会社の横やりによって大きな軋轢が生じます。
この映画を観て、誰がフォード経営陣に感情移入するでしょう?
大衆は現場の苦労が分かっており、彼らに勝たせたいのです。
しかし、最終的には親会社が勝つ。
これが他のレース映画には無い “深み” で、現実を如実に表しています。
大衆は “現場は親会社に勝てない” という現実を理解しており、”映画的な作り物の勝利” に酔いしれる代わりに主人公たちに深く同情します。

2つ目は「ケン・マイルズ vs キャロル・シェルビー」です。
2人のライバルとも友情とも言えない絶妙な関係が、映画に素晴らしいアクセントをもたらします。
1つ目のプロットと入れ子になる経営者と従業員(契約社員?)という上下関係があり、スパナを投げつけたり道路脇の芝生で取っ組み合いをした過去もあるが、実際は “良き理解者” と”優れたエンジニア 兼 ドライバー” として強い絆で結ばれています。

3つ目は「マイルズ一家」です。
妻のモリーが1~2のプロットで描かれる大きな映画的ストーリーと、 “家庭” という現実を結びつける大きな役割を担っています。
演じるカトリーナ・バルフは『ベルファスト』と同じく、逆境でも明るく厳しく家庭を動かす妻であり続けます。
シェルビーと共にケンと家庭を支え続け、その飄々とした振る舞いはまるで観客に対して “変に感傷的になるな” と示しているようです。

 

7000回転の世界
そこではすべてが消えてゆく
マシンは重さを失い
肉体だけが残り空間と時間を移動する
7000回転の世界
その世界が問いかける
重要な問いを
お前は誰だ?

それら3つのプロットに、”新たなモノを作り上げる” というエンジニアリング要素と、”レース” というスポーツ要素を加え、この映画は出来ています。
フォードの足元にも及ばないスポーツカー専業メーカーのシェルビー・アメリカンが、フェラーリを凌ぐレーシングカー開発を目指す。
“職人たちの情熱と技術” によって、 “小が大を制す” お話は、皆さん大好きなはず。
また、人類はスピードに欲望を見出します。
科学的な理由は見つかっていませんが、本能的に “速さ” に魅力を感じます。
それが命を懸けたものであればスリルも加わり、人々の心は7000回転(rpm)を超えて興奮するでしょう。

複数のプロットと要素が組み合わさり、更にジェームズ・マンゴールド監督の手に掛かれば人間ドラマとしても耐えうる一流の娯楽作が出来上がります。
車やレースに興味が無くても、この映画は万人が楽しめる要素に満ち溢れています。

 

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