ギャング・オブ・ニューヨーク

原題 Gangs of New York
製作年 2002
製作国 アメリカ
監督 マーティン・スコセッシ
脚本 ジェイ・コックス、 ケネス・ロナーガン、 スティーヴン・ザイリアン
音楽 ハワード・ショア、 エルマー・バーンスタイン
出演 レオナルド・ディカプリオ、 キャメロン・ディアス、 ダニエル・デイ=ルイス、 リーアム・ニーソン、 ジム・ブロードベント、 ヘンリー・トーマス、 ブレンダン・グリーソン、 ジョン・C・ライリー、 ゲイリー・ルイス

ニューヨークの歴史をベースにアメリカの縮図を描いたマーティン・スコセッシ監督。
2025年時点でスコセッシ監督の6作品に出演しているレオナルド・ディカプリオとのコンビは、この映画から始まりました。
しかし、”昇りながら転落する男” を描き続けたスコセッシ監督という意味では、この映画の主役はダニエル・デイ=ルイス演じる “ザ・ブッチャー” かもしれません。

映画は2つのギャング団の抗争から始まりますが、このオープニングシーンはスコセッシ監督ならではの重厚感と緊迫感に溢れ、映像の力を感じさせます。
2つのギャング団は “ネイティブ” というアメリカ生まれの移民と、”デッド・ラビッツ” という新しい移民です。
実際のネイティブアメリカンは原住民(インディアン)ですが、入植から200年を経て本当のネイティブアメリカンを無き者とし、自分達こそが “ネイティブ” だと考えている点もアメリカらしさかもしれません。
自分たちも移民なのに新しい移民を迫害するという理論も、実にアメリカ的だと思います。

実在の民主党政治家ウィリアム・”ボス”・トゥイードも実にアメリカ的な人物です。
この腐敗した権力者の代表は民主主義をフル活用する術を心得ており、移民船を見ながら「票が増える」とほくそ笑み、「彼らを投票所に連れて行けば対価を支払う」とブッチャーに告げます。
一方で愛国主義者のブッチャーは、移民船から降りてきた同じアイルランド人を明らかに蔑んでいる。
アメリカに染まりきって自らのルーツは完全に忘れているようだ。

ここからはディカプリオ演じるアムステルダムとキャメロン・ディアス演じるエヴァディーン、そしてブッチャーの人間ドラマと闘争が描かれるが、個人的にはどうでも良い。
本当は映画のメインはこっちですが、今回のスコセッシ作品にはあまり興味が湧きません。(この10年後のニューヨークを描いた、同じスコセッシ&デイ=ルイスの『エイジ・オブ・イノセンス』の方がずっと良い)
一つ言えるとしたら、無益な復讐心は周囲の人々も含めた悲劇に繋がるということでしょうか。
エヴァディーンとの恋を楽しみ、ブッチャーの下で働いて後を継げばよかったのに、復讐心に屈した結果は悲劇でしかない。

という訳でアメリカ史の話に戻りますが、確実に存在した暴力全盛の時代がありつつ、彼らはアメリカの表舞台に立つことなく政府と軍によって地下へと追いやられる。
近視眼的な悪は、民主主義の下で肥大化する強大な悪に飲み込まれたのかもしれない。
暴動の制圧後、街路に並んだ多くの死者を見て”ボス”・トゥイードは「たくさんの票が埋められた」と呟く。
悪徳政治家にとって「人命<票」なのだ。
9割は暴力や悪を描きつつ、ダンスイベントや奴隷制に関する演劇を開くなど、少しだけ平和的活動も描いています。
本来の民主主義はこのような思想・活動の貢献も大きいはずですが、この映画の登場人物は無視するか嘲笑する。
今のアメリカを構築したのは、一体どちらだったのか?
そんな疑問が湧いてしまいます。

ラストは時代と共に移り変わるニューヨークの遠景。
遠方に見える都市は巨大化し、手間の墓地は荒れ地となる。
当時の歴史は忘れ去られ、新しい人々が新しい歴史を生み出していく。
公開は2002年ですが、映像ではまだワールドトレードセンターのツインタワーが残っています。
恐らく撮影は2001年9月11日より前で、この直後にあの事件が起こったのでしょう。

 

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