| 原題 | Grans |
|---|---|
| 製作年 | 2018 |
| 製作国 | スウェーデン・デンマーク |
| 監督 | アリ・アッバシ |
| 脚本 | アリ・アッバシ、 イサベラ・エクルーフ、 ヨン・アイヴィデ・リンドクヴィスト |
| 音楽 | クリストファー・ベルグ |
| 出演 | エヴァ・メランデル、 エーロ・ミロノフ、 ヨルゲン・トーソン、 アン・ペトレン、 ステーン・ユングレン |
アリ・アッバシ監督の2作目は衝撃的な映画でした。
異形の者を描く映画は多数あれど、”不気味の谷” すれすれ(これもボーダー)を行く容姿が勝利の鍵だったのかもしれません。
“人間/トロール” という2つの種別を、”善/悪” という2つの軸で分け、善と悪の境界線がいかに曖昧かを描いて見せる。
そして、「同じ種別だから同じ倫理観や価値観を抱く」わけではないことを示します。
アリ・アッバシ監督の作品に共通するテーマは
“怪物を生み出してしまう環境”
です。
この作品では、もちろん「怪物=容姿」ではありません。
ここで描かれる人間の中の “怪物”は、幼児ポルノであり、トロールの迫害です。
トロールの中の “怪物”は、復讐心であり、それを正当化する手段としての新生児の取り換えです。
では人間やトロールの悪を生み出してしまう環境とは何だったのでしょうか?
共通して言えるのは、”弱きもの” への攻撃性や、”異なるもの” への恐怖心かもしれません。
人間の心は弱く、自らを律することもできず、共存することもできない。
“弱きもの” 、”異なるもの” を虐げてきた結果、被害者に復讐心が芽生え、負の連鎖を生んでいく。
一方で主人公ティーナのように、他者の感情を読み取るトロールの能力を使い、人間の倫理に基づいて行使することもできる。
これを見ると、人間に欠けているのは “他者の感情が分かる” という能力なのかもしれません。
アリ・アッバシ監督の映画はすべて不穏な終わり方をするように、この映画も曖昧なエンディングを迎えます。
これは「トロールとして逃げられない運命が届いた」のではなく、育て方を自分で選択できる未来が届いたのだと思いたい。
ティーナは良き人間の倫理感の下で育ったので、その倫理観に基づいて行動してくれることでしょう。
それこそが、負の連鎖を断ち切る希望なのです。
