| 原題 | In Bruges |
|---|---|
| 製作年 | 2008 |
| 製作国 | イギリス・アメリカ |
| 監督 | マーティン・マクドナー |
| 脚本 | マーティン・マクドナー |
| 音楽 | カーター・バーウェル |
| 出演 | コリン・ファレル、 ブレンダン・グリーソン、 レイフ・ファインズ、 クレマンス・ポエジー、 ジェレミー・レニエ、 ジョーダン・プレンティス |
マーティン・マクドナー監督の長編デビュー作は、『イニシェリン島の精霊』へと繋がる主演2人の意見の相違で幕を開ける。
コリン・ファレルとブレンダン・グリーソン演じる2人は性格も考え方も生き方も年齢もまったく異なる。
だからこの映画から14年後のイニシェリン島でも、彼らはまったく考え方が合わないのかもしれない。
アイルランドを代表する劇作家でありノーベル文学賞作家のサミュエル・ベケットの代表作『ゴドーを待ちながら』のように、レイとケンも何かを待っている様子だ。
しかし姿を現さないゴドーと違い、この映画では上司から電話が掛かってくる。
電話が掛かってきた後にドラマが展開するのは定石通りだが、この映画は電話が掛かってくる前も面白い。
不満を溜めた中年男性版『ビフォア・サンライズ』かと思わせる “街をブラつくだけの会話劇” ですが、何が面白いか良く分からないが面白い。
マクドナー監督も劇作家出身だけに、噛み合わない演劇的会話術がどこまでも面白いのです。
ウディ・アレンやクエンティン・タランティーノなど、会話劇を得意とする監督の映画は常に “畳み掛けるような” 会話が繰り広げられるが、マクドナーの場合はゆったりと間を持ちながら会話される。
しかし、その会話が辛辣で示唆に富み、また、とても人間味を感じさせるのです。
その分、役者の力量が試されるかもしれません。
そして、様々な登場人物が好き勝手に行動しながらラストで一堂に集まり、そのうち半分が死ぬという展開を誰が予想したでしょうか。
死ぬと言っても殺人ではなく、自尊心に伴う故意の自死が2つに過失による事故が1つ。
基本的にはブラックユーモアですが、登場人物の多くが何らかの “悔恨” を抱えるなど、ユーモアだけで終わらないドラマが確かにあります。
アクションでも感動作でも娯楽作でも人間ドラマでもない不思議な作風ですが、素晴らしく質の高いデビュー作でした。
最後に一言、B級映画のような安っぽい邦題ですが、原題のまま「ブルージュにて」で良かった気がします。
