| 原題 | Joika |
|---|---|
| 製作年 | 2023 |
| 製作国 | イギリス・ニュージーランド |
| 監督 | ジェームス・ネイピア・ロバートソン |
| 脚本 | ジェームス・ネイピア・ロバートソン |
| 音楽 | ダナ・ランド |
| 出演 | タリア・ライダー、 ダイアン・クルーガー、 オレグ・イベンコ、 ナターシャ・オルダースレイド、 ナタリア・オシポワ、 エリカ・ホーウッド |
ロシアの超名門ボリショイ・バレエ団に入団を認められた初のアメリカ人、ジョイ・ウーマックをモデルに描く。
ロシアの女性名は “a” で終わる風習があるため、原題の「Joika」はロシアでの呼称になります。
自らの肉体と舞踊で表現する美の極致にあるバレエ。
数々のドキュメンタリーでも見られるように、ロシアの一流バレエ団の実態はハラスメント完全アウトの “超体育会系” であることは良く知られている。
この映画の描写はこれでも相当気を使っており、実際の過酷さは一般人には想像もつかないでしょう。
(「さすがにトウシューズにガラス片を入れられたことはない」とジョイはインタビューで語っていましたが…)
その過酷な環境で一握りのエリートを目指すには能力と共に一流のメンタルが必要で、この主人公のように強迫観念的になってしまうのも頷ける。
昇り詰めるためには肉体・精神・感情・時間のすべてを注ぎ込まねばならず、一歩間違えば自己破壊的になりかねない。
そうしなければ達成できないから。
でもそれが最終的に意味のある結果をもたらすのか、それともマゾヒスティックになっているだけなのか、それとももっと健全なやり方があるのか、その時点では分からない。
ゴールに辿り着いて、もしくは挫折した後に、ようやく気付くことができる。
で、映画ですが、これは残念ながら自己探求や再生の物語ではない。
政治や腐敗が入り込み、中途半端な師弟関係が入り込み、テーマが非常にぼやけているし、マーケティング的にも “サイコサスペンス” というジャンルで売ろうとしている。
個人的な希望を言うと、もっとストレートに “一流バレエ団を目指す一人の人間” の内面と道のりをドラマティックに描いて欲しかったです。
せっかく実話ベースなんだし、フィクションでサイコ路線なら『ブラック・スワン』という超えられない壁があるから。
主演のタリア・ライダーはバレエ未経験で、撮影にあたり1年間のトレーニングを受けたものの、ロシアのクラシカルスタイルに合わせるため更にジョイ・ウーマック本人から指導を受けるなど、相当な努力で未経験者とは思えない迫力あるシーンを実現しました。
デビュー作の『17歳の瞳に映る世界』でも心の内に強さと悲しみを湛えた演技で主役以上の評価を得ていましたが、今回も “ザ・役者魂” を存分に見せつけてくれたので、これからも順調にキャリアを伸ばしていけると期待しています。
