美しい夏

原題 La bella estate
製作年 2023
製作国 イタリア
監督 ラウラ・ルケッティ
脚本 ラウラ・ルケッティ
音楽 フランチェスコ・チェラージ
出演 イーレ・ビアネッロ、 ディーバ・カッセル、 ニコラ・マウパ、 アレッサンドロ・ピアバーニ、 エイドリアン・ドゥビッテ、 コジマ・チェントゥリオーニ

20世紀イタリア文学におけるネオレアレズモの代表的な作家/詩人であるチェーザレ・パヴェーゼの原作を映画化。
これは大人へ一歩踏み出そうとしている見習いの少女の成長物語であり、ほろ苦い青春物語です。

田舎から出て兄と二人でトリノに暮らし、オートクチュール工房で仕立て屋の見習いをしている妹。
ある日、魅力的な少女アメーリアと出会い、その不思議な魅力と交友関係に惹かれていく。
画面に登場した瞬間から圧倒的な存在感を放つアメーリア。
演じるのは、ヴァンサン・カッセルとモニカ・ベルッチ夫妻の娘ディーバ・カッセル。
気を抜くと父の顔そっくりになってしまいますが、母親譲りのスタイルと美貌の持ち主で、サラブレッド女優の今後が楽しみです。

 

私も描かれたい
本当の私を見つけて描いてほしい

名前の通りディーバ(イタリア語で “女神”)で太陽なアメーリアの陰で、月のようにひっそり佇むジーニア。
彼女は田舎から出てきた貧乏な労働者で、何者でもない。
だからアメーリアに憧れ、彼女の人生観やライフスタイルに影響を受けていく。
そんなジーニアをアメーリアは心配そうに見守る。
ジーニアがアメーリアに惹かれた理由は一目瞭然ですが、アメーリアがなぜジーニアに惹かれたか映画では描かれていない。
愛に理由は無いのかもしれませんが、観ていてすごく気になる点でした。

 

幸せになれ
不幸な人生は無意味だ

兄は背伸びをする妹を心配そうに見守る。
しかし人生の目標を見失い、青春を急いだジーニアにその声は届かず、彼女は若者に相応の傷を負う。
大怪我はしなかった。
それはきっとアメーリアがいたから。
アメーリアが見守ってくれた意味がようやく分かり、ジーニアは人生の隠された扉を見つけ、大人への一歩を踏み出す。

美しい映像と丁寧な演出で綴られた “文芸作品の上澄み” のような作品でした。
一方で、非常に綺麗で鑑賞に十分耐える映画なのに何か物足りない作品でもあります。
原作小説はファシスト政治が勃興する1938年を舞台としていますが、重苦しい時代の描写はほとんどありません。
また、当時の女性が社会でどのように扱われてきたかに関しても描かれておらず、主人公以外の登場人物の欲望や動機もあまり描かれていません。
ただ綺麗なだけでは、インパクトのある作品とは呼べないのかもしれません。

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