墓泥棒と失われた女神

原題 La chimera
製作年 2023
製作国 イタリア・フランス・スイス
監督 アリーチェ・ロルヴァケル
脚本 アリーチェ・ロルヴァケル
撮影 エレーヌ・ルヴァール
出演 ジョシュ・オコナー、 カルロ・ドゥアルテ、 ヴィンチェンツォ・ネモラート、 アルバ・ロルヴァケル、 イザベラ・ロッセリーニ、 ルー・ロワ=ルコリネ

アリーチェ・ロルヴァケル監督の映画を初めて観ましたが、これは独創的で幻想的で不思議な映画でした。
現代版ネオレアリズモ映画ですね。
そして、ジョシュ・オコナーはいつも暗く悲しげで、本当に素晴らしい顔をしている。
名前はアーサーなのに王の雰囲気はまるで無く、白い服がどんどん汚れていき、最後はキリストの聖骸布のようだ。

この映画で “墓の盗掘” とは一体何を表しているのか?
アーサーは最愛の人を失っており、冒頭の映像で分かるように、その影を追い続けている。
「墓に葬られているのは人ではなく魂」というセリフもあるように、彼女の魂を探しているのか。
たまに盗掘品を持ち帰ることがあるが、それらに彼女の痕跡を見つけたのだろうか?

それとも “過去は誰の所有物なのか?” という意味なのでしょうか。
盗掘することで過去は強制的に掘り起こされ、発見者や購入者の手を転々とする。
思い出として留めておきたいアーサーの想いも、誰かに掘り起こされてしまうのだろうか。

 

君なのか 俺が失った女性の顔は

その理由は最後まで分かりません。
でも最後に、ようやく地下で彼女の赤い糸を見つける。
そして、忘れていた彼女の顔を鮮明に思い出す。
アーサーは盗掘することで自身の過去を見つけ出し、もう一度彼女に会いたかった。
ただ、それだけなのかもしれません。

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