ラ・コシーナ 厨房

原題 La cocina
製作年 2024
製作国 アメリカ・メキシコ
監督 アロンソ・ルイスパラシオス
脚本 アロンソ・ルイスパラシオス
音楽 トマス・バレイロ
出演 ラウル・ブリオネス・カルモナ、 ルーニー・マーラ、 アンナ・ディアス、 モーテル・フォスター、 ローラ・ゴメス、 オデッド・フェール

慌ただしいNYのレストラン厨房で起こるノンストップドラマを描いた『ディナーラッシュ』の現代版。
映画的ドラマ感に満ちていた『ディナーラッシュ』に比べ、こちらは70年前!の戯曲が原作なので、映画的な舞台を見ているよう。
大勢のキャストの計算され尽くした動き、誇張された表現、意味ありそうで訳が分からない独白など、「これは普通の映画ではない」と分かって観ると相当楽しめます。

とにかくラウル・ブリオネス演じるペドロの “人間臭いダメ男っぷり” が素晴らしい。
少女エステラの成長物語という映画の入りなのに、大幅カット or 脚本変更があったのか、エステラは途中でどこかに消えてしまう。
もしくは夢や希望や不安を抱いて働きに来た若者が、一瞬で恐ろしい現実に圧倒されて埋もれるという意味かもしれません。
代わりにカメラは “ダメ男ペドロ” を追いかけ続け、ノンストップでしゃべり・動き続ける様子を映し出す。
相手役でこの映画唯一のスター、ルーニー・マーラですら、数多くのウェイトレスの一人に見えてしまうほどの存在感です。

 

誰か夢を語ってくれ

時間の無駄よ

登場人物の多くは不法移民ですが、アメリカで起きている社会問題というよりは、”誰も夢を掴めない” という資本主義の現実を描いているんだと思います。
夢を掴めないどころか忙殺される現実に夢を持つことすらできず、皆生きることに精一杯。

 

俺の夢を知りたいか?
消えたいと思ってる

だから皆ここを去りたいと思っているが、国外退去だけは避けたい。
祖国よりアメリカの方がマシだが、弱者から搾取し続ける資本主義を前に、消えていなくなりたいと思っている。
そこから謎の “緑の光線” の話が延々と続き、「こいつヤバいぞ」と皆が怪訝な顔をしながら聞いている。
観客も「これは何の時間?」と思っていたら、最後にまさかのオチで笑いが止まりません。

 

何が望みだ?
これ以上何が欲しい?

オーナーの言葉ですね。
資本を持つものは、資本を持たないものに最小限しか与えません。
資本主義とは “平等” ではなく “自由” です。
“自由” とはすなわち “競争社会” です。
“競争社会” は少ない投資で多くの利益を上げたものが勝ちで、負ければ “搾取される側” に回ります。
よって、資本を持つものは資本を持たないものに最小限しか与えないのです。

最近の日本は人口減で働き手の奪い合いですが、移民が増えると働き手の代わりなんて幾らでもいるので、彼らは我慢するしかありません。
これが、この映画で描きたかったテーマではないでしょうか。
それが資本主義であり競争社会で、その代わりに “競争を勝ち抜いた者は富を得る” のです。

最近だと『ボイリング・ポイント』もそうですが、たまに出てくる “厨房映画” は面白いですね。
レストランはいつまでもグレーな業界で、そんなグレーな業界の笑えるブラックな終わり方でした。
レシートマシンのLEDを浴びても、消えていなくなることは出来ないのです。

チームビルディングはどの業界でも大事ですね😑

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