| 原題 | Linda veut du poulet! |
|---|---|
| 製作年 | 2023 |
| 製作国 | フランス |
| 監督 | キアラ・マルタ、 セバスチャン・ローデンバック |
| 脚本 | キアラ・マルタ、 セバスチャン・ローデンバック |
| 音楽 | クレモン・デュコル |
| 出演 | メリネ・ルクレール、 クロチルド・エム、 レティシア・ドッシュ、 エステバン、 パトリック・ピノー |
フランス発、粗いけれど独特の温かいタッチでシングルマザーと娘の日常を描いた心温まるアニメ。
世界は安定せず曖昧で、常に移ろい流れていきます。
そんな世界が絵のタッチでうまく表現されていました。
また、子育て経験のある人ならすぐに分かりますが、これは「ドタバタ喜劇」ではなくシングルマザーの日常であり、何も誇張されていません。
経済的にも時間的にも心理的にも余裕がないシングルマザーと、親の苦労が全然分かっていない子供が唯一共有するのは、”父親(夫)の喪失” です。
お詫びに何でもする。何でも言って。
チキンとパプリカ。ポッロ・コン・イ・ペペローニ。
私には難しくて作れない…
娘を疑い、ぶってしまったお詫びに、母親は子供の願いを叶えようとしますが、それは父親しか作れない料理でした。
娘は父親のことをよく覚えていませんが、子供にとって味覚は記憶に勝るのでしょうか、父親が作ってくれた料理の味は覚えています。
そこから母親の奮闘が始まりますが、問題は雪だるま式にどんどん膨らんでいきます。
行きたい店が全部閉まっているなんて、シングルマザーの日常では当たり前なのです。
計画は立てた瞬間から破綻し、やることなすこと思い通りに進みません。
きっと世の中が常にストライキしているように見えるでしょう。
それでも埋め合わせのために悪戦苦闘します。
決して理想の母親ではないかもしれませんが、これが現実の母親なのです。
娘はそんな母を徐々に理解し、応援しようとします。
初めは謝罪のつもりで始めましたが、終わるころには母娘はすっかり和解していました。
覚えてないことは存在しなかったの?
いいえ。
パパは本当に存在した?
ええ。
あんまり覚えてない…
娘は父親の記憶がないことを後ろめたく感じています。
ただ、料理を作ってくれたこと、美味しかった料理の味は覚えています。
そして今回、”ポッロ・コン・イ・ペペローニ” を食べることで、少しだけ父親のことを思い出せるようになりました。
粗いアニメーションで描いたドタバタ喜劇ですが、そこに描かれているのは母親と娘のリアルな “日常” と “和解” と “喪失の埋め合わせ” で、とても素敵で愛情溢れるホロリとさせるストーリーでした。
