青いパパイヤの香り

原題 L’odeur de la papaye verte
製作年 1993
製作国 フランス・ベトナム
監督 トラン・アン・ユン
脚本 トラン・アン・ユン
撮影 ブノワ・ドゥローム
出演 トラン・ヌー・イエン=ケー、 リュ・マン・サン、 グエン・アン・ホア、 クエン・チー・タン・トゥラ、 ヴォン・ホイ

日陰に一本の桜の木
水の旋律に共鳴して見事に咲き誇る
たとえ水がうねり逆巻いても
桜の木は凜とたたずむ

今週は訳あってベトナム特集📽️
最初はトラン・アン・ユン監督のデビュー作。

フランスのセットで撮影されたとは思えない、ベトナムの風土・雰囲気が素晴らしい🙂
この “静けさ” や “間” 、”画の美しさ” など、感覚で表現する手法は現在のベトナム映画にも脈々と引き継がれています。
映画が 「現実を詩的な方法で探求する芸術」だとすれば、この映画は十分に五感と感情を詩的な世界に没入させてくれるでしょう。

描かれるのは、インドシナ戦争終盤の混乱期から束の間の平穏な時代。
若いメイドの目を通して、崩壊しかかった家族の内側と周囲の世界を深い純真さと繊細さを持って見渡し、日常生活・成長・記憶・愛・喪失という普遍的なテーマを静かに写し取る。

「小さなものの美しさはしばしば私たちの手に負えないものですが、人生の真実はまさにこうした瞬間にこそ存在する」
というユン監督の言葉のように、映像と構図は細部にまで気が配られ、画面上のあらゆる要素が意味を持ち、画面の中で瑞々しく美的に存在する。
そして、パパイヤの生命力、勤勉さと内に秘めた想いで自立を実現した主人公は、ベトナムの国民性にも繋がる。
ベトナム戦争に突入する前の僅かな期間、ベトナムという国が古い風習から少しずつ脱し、平和的に成長できた数年を鮮やかに切り取った傑作でした。

ラスト、主人公が突然カメラ目線になり朗読する内容と演出が素敵です🙂

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