マネーボール

原題 Moneyball
製作年 2011
製作国 アメリカ
監督 ベネット・ミラー
脚本 スティーヴン・ザイリアン、 アーロン・ソーキン
音楽 マイケル・ダナ
出演 ブラッド・ピット、 ジョナ・ヒル、 フィリップ・シーモア・ホフマン、 ロビン・ライト、 クリス・プラット、 スティーヴン・ビショップ、 リード・ダイアモンド

90年代以降、総年俸が高騰していくメジャーリーグの中で、伝統的に低予算で良い成績を収める球団がある。
その走りがオークランド・アスレティックスだ。
きっかけは、この映画で描かれる主人公ビリー・ビーンGM(ゼネラル・マネージャー)がセイバーメトリクスと出会ったこと。
セイバーメトリクスの使い手としてジョナ・ヒル演じるピーター・ブランドというデータオタクが出てくるが、実際はポール・デポデスタという人物。
(自分とかけ離れた描かれ方をしたので、デポデスタは実名を出すことを拒否。だから映画ではピーターという別人物で出ています。)
ハーバードで学んだ経済学の手法を駆使し、今に繋がるデータ野球を彼が見つけ出して考案した。

野球は数あるスポーツの中で最も数値化しやすいスポーツです。
むしろ数字で成り立っていると言ってもいいくらい。
今に続く情報化・データ活用化の流れはむしろ当然で、だから最初に
データを活用したアスレティックスは強い。
イチローのいたシアトル・マリナーズと同地区だが、マリナーズよりもずっと強い。
その証拠にイチローは移籍初年度しかプレーオフに進んでいないが、アスレティックスはイチローがマリナーズにいた9年間で3度地区優勝し、4度プレーオフに進んでいる。

そのアスレティックスの強さを紐解いたのが、金融ジャーナリストでノンフィクション作家のマイケル・ルイスが著した『マネー・ボール 奇跡のチームをつくった男』。
その内容をベースに、この映画は作られました。
脚本はアーロン・ソーキンとスティーヴン・ザイリアン。
2人ともアカデミー脚本賞に何度もノミネートされている名脚本家で、この2人が共同で手掛けていれば、間違いなく良い映画に仕上がるはず。
だからこの映画も単なる娯楽作やサクセスストーリーではなく、一人の男が挫折や逆境、数々の抵抗を乗り越え、生き馬の目を抜く激しい競争社会において、伝統的で古い思想や構造に挑もうとする骨太なドラマに仕上がっている。
主人公は無欠ではなく、優秀だが欠陥も多い。
それらをあからさまに描くのではなく、様々な箇所に忍ばせて丁寧に描写していく。
当時の選手たちが実名で登場するところも、MLBファンにとっては堪らない。
素晴らしい映画でした。

ちなみにビリー・ビーンは選手時代にツインズとアスレティックスで2度のワールドシリーズ制覇を成し遂げています。(完全な控え選手でしたが…)
今は球団副社長になっていますが、経営者としてもいつかワールドシリーズを制覇して欲しいです。
でもアスレティックスは低予算のため、花形選手はすぐに他球団に移籍してしまう。
だから球団に愛着を持てるファンが少なく、特にコロナ禍以降は観客動員数が激減。
新しい球場と市場を求めて、2028年からラスベガスに移転することが決定しています。

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