ネルーダ 大いなる愛の逃亡者

原題 Neruda
製作年 2017
製作国 チリ・アルゼンチン・フランス・スペイン
監督 パブロ・ラライン
脚本 ギレルモ・カルデロン
音楽 フェデリコ・フシド
出演 ルイス・ニェッコ、 ガエル・ガルシア・ベルナル、 メルセデス・モラーン、 ハイメ・バデル、 アルフレド・カストロ

チリ出身のノーベル賞詩人パブロ・ネルーダが国外逃亡を図った1年間を描く。
というと史実に基づいた作品のようですが、この映画はパブロ・ラライン監督の遊び心と独創性、映画的才能に溢れた作風に。

映画でパブロ・ネルーダといえば『イル・ポスティーノ』が有名ですね。
労働者階級の素朴な郵便配達員マリオが、イタリアに政治亡命してきたチリの著名な詩人へ郵便を配達する中で、詩への愛を育んでいく。
マリオは詩を通してベアトリスの心を掴みます。
しかし、地元の司祭はネルーダの物議を醸す政治的見解を理由に、マリオが介添人を務めることを許可しません。
これはネルーダの亡命生活を寓話風に描いたフィクションですが、そのメッセージは明確です。
昔から詩と政治は相容れないものですが、現実には両者は分けられない存在なのです。

左翼エリートは乱痴気騒ぎを好む
文句を言う時以外は
心の底では幸せで恋もしているが
他人の苦悩に浸るのが好きだ

実際のネルーダは難解で扇動的な詩人ではなく、政治家で野党の指導者でもあり、甚大な経済格差を解消しようと奮闘します。
それが政権の逆鱗に触れ、安全のために身を隠す。
そこから先は、”幻想” と “詩” の世界。
めくるめく言葉の蝶が舞い、我々はネルーダと共に逃亡を始め、やがて彼はどこかに消え去り、我々だけが取り残される。
そう、我々は追跡者のペルショノーなのです。

詩人は社会の脅威であり、同時に忘れられない恋人でもある。

ペルショノーと共にネルーダを追い、追いかけるという強迫観念は返す波となってペルショノー自身を追い詰める。
ネルーダの詩の力、そして存在そのものが大きすぎるために、警部と言えど一庶民には捕らえることができない。

久しぶりに観た、一風変わった言葉の力を感じる映画でした。

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