ノスフェラトゥ(1979)

原題 Nosferatu-Phantom der Nacht
製作年 1978
製作国 西ドイツ・フランス
監督 ヴェルナー・ヘルツォーク
脚本 ヴェルナー・ヘルツォーク
音楽 ポポル・ヴー
出演 クラウス・キンスキー、 イザベル・アジャーニ、 ブルーノ・ガンツ、 ローラン・トポール、 ワルター・ラーデンガスト

F・W・ムルナウ監督が1922年に製作した『吸血鬼ドラキュラ』に続き、同郷のヴェルナー・ヘルツォーク監督が2度目の映画化。
アイルランドの小説家ブラム・ストーカーのゴシックホラー小説「吸血鬼ドラキュラ」が元ネタですが、どちらの作品も正式な許諾を得られていないため、正式な原作とは位置づけられていません。
しかしどちらも内容は原作と同じストーリーで、かつ今回のヘルツォーク版は基本的に1922年の『吸血鬼ドラキュラ』と同じ描写をしています。
独創的なイメージのヘルツォーク監督ですが、ムルナウ版に対して相当な愛とこだわりがあり、別物ではなく敢えてリメイクという手法を取りました。
(更に2024年にもロバート・エガース監督によってリメイクされます)

 

死が勝利するのです
人はいつか死ぬ
星は戸惑いながら巡り
時は無分別に過ぎ
川は行方も知らず流れる
死だけは残酷なまでに確か

死は残酷だと思うだろう
だが死がすべてではない
死ねないことはさらに残酷だ

そしてヘルツォーク監督と言えばクラウス・キンスキーで、この映画は4度のタッグのうち2回目の作品になります。
彼がいたからこそ、ヘルツォーク監督はドラキュラを撮りたいと思ったのかもしれません。
それくらい、クラウス・キンスキーが演じるドラキュラ伯爵は異様さと存在感が自然と際立っています。

そんなドラキュラの牙の対象となるのがイザベル・アジャーニです。
白く透明感のある薄幸の美女を演じるのに打ってつけですが、今回はドラキュラを討つという意地と情熱も垣間見せます。
ドイツ映画になぜフランス人のイザベル・アジャーニが?と思いきや、彼女はアルジェリア人とドイツ人のハーフで、生まれと国籍がフランスなだけ。
だから、この2人がキャスティングされるのに違和感はなく、むしろ先にも後にもこの2人を超える組み合わせはないだろうと思わせます。
2024年版のリリー・ローズ・デップも良いですがイザベル・アジャーニには並ぶことすらできず、ドラキュラ伯爵の俳優は名前すら思い出せません。

更に風景や街並みの再現も本格的で、ゴシックホラーの世界観が見事に作られています。
映像美にこだわり抜いた2024年版と比べると見劣りするかもしれませんが、CGに頼れない50年前はかなりの労力を要したはず。
撮影時の動物の扱いは酷かったと後々暴露されていますが、風景から細部の描写まで一切手を抜いていない様子が見て取れます。

そういうわけで、ヘルツォーク監督&クラウス・キンスキー&イザベル・アジャーニという異才を堪能できる、見ごたえのある作品でした。

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