名もなきアフリカの地で

原題 Nowhere in Africa
製作年 2001
製作国 ドイツ
監督 カロリーヌ・リンク
脚本 カロリーヌ・リンク
音楽 ニキ・ライザー
出演 ユリアーネ・ケーラー、 メラーブ・ニニッゼ、 レア・クルカ、 カロリーネ・エケルツ、 マティアス・ハビッヒ、 シデーデ・オンユーロ

デビュー作の『ビヨンド・サイレンス』に続いてアカデミー外国語映画賞にノミネートされ、この作品で見事に受賞。
少女の成長物語を描き続けるカロリーヌ・リンク監督が、今度は第2次大戦下でアフリカに疎開した少女を描く。
“ユダヤ人迫害により家族で逃亡” という設定は、『ヒトラーに盗られたうさぎ』と同じ設定ですね。

『名もなきアフリカの地で』、『ヒトラーに盗られたうさぎ』、どちらも少女は不満を示しつつ、環境にすぐ適応する。
子どもとは、常に逞しい生き物なのだ。
子どもが一瞬一瞬を大切に過ごすのに対し、大人達の日常は不満と無理解、疑念に満ちている。
「料理人は地面を掘らない」「男は水汲みをしない」という現地のルールも、レギーナにとっては何も問題ない。
それなのに、学校生活ではユダヤ人というだけで差別を受ける。
まるで大人達が、料理人オウアがアフリカ人というだけで召使いの仕事を依頼するように。

女たちの歌はいつもより心に響いた
オウアは感じていたようだ
悲しい日が近づいていることを

これは家族3人それぞれの物語。
アフリカに馴染もうとした父は、ドイツへの帰還を望み、
アフリカを拒絶した母は、アフリカへの思いを深め、
アフリカを受け入れた娘は、アフリカを愛し続ける。
人生は思い通りに進まず、それでも前に進まなければならない。
彼らにとって、アフリカで得たものは何だったのか?
そしてアフリカで生活したことによって、これからの人生で何が変わるのか?

映画を観ることで、彼らが体験したことが何となく実感できる。
様々なエピソードを繋ぎつつ、1つ1つが等身大の感覚で瑞々しく描かれている。
素晴らしい疑似体験映画でした。

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