オールド・フォックス 11歳の選択

原題 老狐狸/Old Fox
製作年 2023
製作国 台湾・日本
監督 シャオ・ヤーチュアン
脚本 シャオ・ヤーチュアン、 チャン・イーウェン
音楽 クリス・ホウ
出演 バイ・ルンイン、 リウ・グァンティン、 アキオ・チェン、 ユージェニー・リウ、 門脇 麦

紀元前の哲学者アリストテレスは、『ニコマコス倫理学』において「”善く生きる” と “幸福に生きる” は同一であり、徳を備えた人間だけが幸福に生きられる」と説いている。
また、18世紀ドイツの哲学者イマニエル・カントは、「幸福そのものを “道徳的善さ” と切り離し、直接的に追求してはならない」と言う。
正しい行いのみが幸福に通じ、幸福の追求が道徳に反してはならず、2つは表裏一体だと定義しています。

不安定な社会のみならず、あらゆる社会で財を為す人々は清廉潔白なのか?
恐らく9割以上は違うだろう。
老狐と呼ばれる謝も「冷たい水を飲んで目を閉じ、こう考えなさい。”自分に関係ない” と。」と子供に教える共感性に欠如した人物だ。
ルールは破っていないかもしれないが、”道徳的善” を持ち合わせていない。
そして、「俺みたいで何が悪い」と偉ぶる。

しかし、”道徳的善” を持ち合わせた父リャオジエは必要最低限のものしか手に入れられず、周囲を助けたくても物理的余裕が無く助けられない。
競争社会の資本主義において、どちらが正しいのでしょうか?
もしくは、どこまでの行為は許されるのでしょうか?
それは、2人の哲学者の言葉を読み返せば理解できる。

主人公の少年リャオタイライは2人から何を学んだのでしょうか?
それはラストに明かされます。
彼は父と同じく清掃員が怪我をしないよう “カッターの刃を厚紙に挟んで捨て”、”自分たちの利益を増やすために” クライアントの意に反する提案をする。 
父と同じ優しさを持ちつつ、老狐と同じ “したたかさ” も備える。

うん、ちょっと中途半端な人間になってしまいましたね。
「最後は父に学んだんじゃないんか~い」って思ってしまいますが、ズルさを併せ持つのが資本主義を生き抜く必須スキルということでしょうか…
でも他者を思いやる優しさだけは忘れないようにしましょう。

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