| 原題 | Shelley |
|---|---|
| 製作年 | 2016 |
| 製作国 | デンマーク・スウェーデン |
| 監督 | アリ・アッバシ |
| 脚本 | アリ・アッバシ |
| 音楽 | マーティン・ディルコフ |
| 出演 | エレン・ドリト・ピーターセン、 コスミナ・ストラタン、 ピーター・クリストファーソン、 ビョルン・アンドレセン |
アリ・アッバシ監督のデビュー作。
これ以降『ボーダー 二つの世界』『聖地には蜘蛛が巣を張る』『アプレンティス:ドナルド・トランプの創り方』と、ナチュラルホラーからサスペンス、社会派娯楽作まで作品ごとに色を変えますが、このデビュー作から非常に質の高い作品でした。
とても作家性を感じさせる映像と描き方ですが、デビュー作にありがちな尖った感じや分かりづらさはなく、”無意識の搾取” という深いテーマが丁寧に、そして恐ろしく描かれます。
そこが、よくあるマタニティ・ホラーではないところ。
主人公のエレナは小さな子供を置いてルーマニアからデンマークに出稼ぎに来た女性です。
家政婦として雇ったルイスは、何の悪気もなく、ある日エレナに「代理母にならないか?」と持ち掛けます。
しかし、これまで楽しかった生活が徐々に暗転していく。
これは格差や人種間における “無意識の悪意”、”見せかけの善意” を描いたもの。
代理母は法的に問題ないかもしれませんが、身体的/精神的/道徳的に大きなリスクを伴うし、身内でもないのに代理母を希望する人のほとんどは金銭的なリターンが得られるからでしょう。
しかし、実際はデンマークも含むEU全体で「商業的代理出産は禁止=金銭授受はNG」と決められています。
ただ、デンマークは法的に未整備なので金銭授受さえしなければ、代理出産自体が禁止というわけではないのです。
公的医療サービスを通じての代理出産は認められていませんが、公的以外ならルールが無いというグレーゾーン。
つまり倫理的なルールが未整備な状況で、個人の願望だけで解決しようとする危うさが内在します。
それが富裕層(質素な暮らしだが実際はお金に困っていない)と出稼ぎ労働者の間で起こる。
悪意はなくても、明らかに “見えないパワーバランス” が存在しています。
デビュー作以降の4作を観る限り、アッバシ監督の描く共通テーマは
“怪物を生み出してしまう環境”
なので、この映画でも親切な女性ルイスは実は “怪物” だったのです。
ちなみに謎の祈祷師はまさかのビョルン・アンドレセンでした。
かつての伝説の美少年とは思えない風貌ですね。
