原題 | Sicario |
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製作年 | 2015 |
製作国 | アメリカ |
監督 | ドゥニ・ヴィルヌーヴ |
脚本 | テイラー・シェリダン |
撮影 | ロジャー・ディーキンス |
出演 | エミリー・ブラント、 ベニチオ・デル・トロ、 ジョシュ・ブローリン、 ダニエル・カルーヤ、 ジョン・バーンサル |
特殊ミッションに加わったFBI捜査官
真相を知らされないまま事態は進展し
やがて信じがたい事実に直面する
個人的 ヴィルヌーヴ監督特集 4作品目。
今作で映像美が復活したドゥヌ・ヴィルヌーヴ監督の傑作ドラマ。
主人公の心情と共に観客も徐々に闇に入り込み、やがて善悪の”境界線(ボーダーライン)”を彷徨う。
ベニチオ・デル・トロの存在感も凄い!
今日の事件の首謀者を逮捕できますか?

ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の映画は、他の監督とは作りの “質” も “深さ” も違う。この映画も普通に作れば良くあるサスペンスアクションで終わりですが、ヴィルヌーヴ監督は主人公エミリー・ブラントの視点を借りて “これからどうなるのか”、 “一体何が起きるのか” という不安と緊張感を観客に抱かせる巧みな仕掛けを施した。もうそれだけで上質な映画の出来上がりです。
冒頭の事件で観客を惹き込みつつ、すぐ会議シーンとなり、主人公ケイトは “何か” に巻き込まれていく。その “何か” が分からない。
この「分からない」という要素と映像・音響・演技/演出が絡み合い、極上の犯罪サスペンスが誕生した。
アメリカ人の君には理解できまい。
すべてを疑うだろう。だが最後には君も理解する。

このセリフが、この映画のテーマかもしれません。
同行しているのに正体不明のベニチオ・デル・トロが秀逸!
ナビゲーターが指揮官のジョシュ・ブローリンで、乗客がエミリー・ブラント(=観客)という構図なのに、隣の席に座る怪しすぎる別の乗客がいる。これは恐怖でしかない。
他の映画のように「観客に分からせよう」「観客を混乱させよう」という意図が見え見えの演出やストーリーではなく、自然で現実的に見せてくる。そして「テンポは良いがセリフは最小限で、余白の多い映像で魅せる」ドゥニ・ヴィルヌーヴ映画の観やすさが素晴らしい。
交戦規定は?
自由射撃だ

ドゥニ・ヴィルヌーヴの映画は、戦闘シーンですら静かで美しい。これから訪れるクライマックスを前に、無音の静寂が訪れる。この後、兵士たちは斜面を下りながら画面下の黒い部分に消えていく。
その美しい映像が流れた後、「自由射撃」のセリフ一言で状況の異常さを伝えてしまう。凄い演出です。
毎晩、お前は “家族” を殺させている。だがお前は食事をしている。
お前を雇った連中は違うのか? 誰が始めたことだ?

ここに至るまでの一連のショットと演出は “神” のなせる技。
アレハンドロの正体は中盤で明かされていますが、その “意図” と “黒幕” と “業の深さ” が一気に暴かれ、衝撃的なラストを迎える。
それでもまだ終わりではない。数日後にケイトの元を訪れ、再び牙を見せる。2つの緊迫シーンは、正にこの映画を締めくくるに相応しい。
原題は「Sicario=殺し屋」だが、邦題は「ボーダーライン」。この邦題は秀逸で、「国境」を指すだけでなく “善悪の境界線” とも解釈できる。我々はこの映画でボーダーラインを彷徨うのだ。
そしてこの映画は批評家の評価が非常に高い作品でもある📽️
前作の「プリズナーズ」も高評価ですが、個人的にはこちらの方がずっと好き!
ヴィルヌーヴ監督の映画はセリフが少なく展開も速すぎないので、没入できるし考えながら観られて良いですね🙂
本作以降はSFに舵を切りますが、ドラマやサスペンス映画に早く戻ってきて欲しいです。
https://twitter.com/cinematographjp/status/1560911172123381760?s=20&t=nkgxYlmaoaXEhOcpysnRag