| 原題 | Sing Sing |
|---|---|
| 製作年 | 2023 |
| 製作国 | アメリカ |
| 監督 | グレッグ・クウェダー |
| 脚本 | クリント・ベントリー、 グレッグ・クウェダー |
| 音楽 | ブライス・デスナー |
| 出演 | コールマン・ドミンゴ、 クラレンス・マクリン、 ショーン・サン・ホセ、 ポール・レイシー |
他者を演じるためには、”本当の自己” を深く知らなければならない。
自己を知らなければ、他者を演じてもそれは表面的な “仮面” に過ぎない。
しかし、犯罪の世界にいた人間の多くは仮面を付けて本当の自分ではない自分を演じてきた。
そして警備レベル「Maximum security」のシンシン刑務所では、看守や他の受刑者から身を守るために、受刑者は心を押し殺して生きている。
ここでは人間性は解放するものではなく、内に閉じ込めておく必要がある。
だから塀の外でも中でも、受刑者の多くは “本当の自己” を隠して生活せざるを得ない。
映画の題名にもなっているこの刑務所の特徴として、自己の精神を守るための個室があり、更生のための演劇プログラムがある。
人間性を必要としない刑務所において、演劇は自己を解放できる限られた場だ。
立ち上げメンバーでもあるベテランのディヴァイン・Gは、”本当の自己” もさらけ出すし、演技も上手い。
シェイクスピアを理解している強面の新参ディヴァイン・アイは、長く自分を偽って生きてきたため、初めは演技することができない。
しかし、無実を訴えるディヴァイン・Gは釈放を巡って多くの挫折を味わい、その間にディヴァイン・アイは “偽りの自己” と”本当の自己” を理解することで更生し、先に塀の外へと出る。
2人のディヴァインの演技も興味深いが、マイク・マイク役のショーン・サン・ホセと、講師役のポール・レイシーの演技が素晴らしい。
ポール・レイシーは『サウンド・オブ・メタル』でも印象的な講師役を演じてアカデミー助演男優賞にノミネートされていますが、この作品も感情を抑えつつ見事な演技でした。
また、塀の中とはいえ、ケン・ローチの映画のようにとても現実感に溢れた映像と演出で、演技ではなく登場人物が自発的に会話し、本当に行動しているように見える。
刑務所&演劇というテーマは幾つかの映画になっていますが、この作品は嘘臭さが無くリアリティが感じられ、ドラマも控え目になっている点が良い意味で印象的でした。
