映画一家に生まれ育ち、父親は フランシス・フォード・コッポラ監督。
1999年『ヴァージン・スーサイズ』で長編デビューし注目を集める。2003年『ロスト・イン・トランスレーション』でアカデミー脚本賞やゴールデングローブ賞 脚本賞、セザール賞外国映画賞などを受賞し評価を高める。2010年『SOMEWHERE』で第67回ヴェネツィア国際映画祭の金獅子賞を受賞。
全作に共通するのは、 “少女/女性が抱く疎外感と鬱屈”。
“憂鬱” ではなく、憂鬱を超えて “鬱屈” した気持ちを密かに抱えた女性たちを描き続ける。
登場人物は家族や社会、境遇に馴染めず、彼女たちなりの行動をとる。
ただ起きた事実を中心に描き、人間的な掘り下げや心理的な葛藤は控えめ。
それが原因で多くの批判に晒されてきたし、確かに観ていて物足りなさを感じてしまうが、それはもう彼女のスタイルだと割り切った方がいいのでしょう。
でもコッポラ監督はそんな評価にひるまず、史実であっても自分の描きたい視点・描き方を貫き通す。
それが現代風『マリー・アントワネット』であり、皮肉も主張もない『ブリングリング』であり、主観的視点の『プリシラ』でした。
そしてソフィア・コッポラ監督を語る上で外せないのが “ガーリー・カルチャー” と “音楽センス”。
映画監督になる前はファッション・フォトグラファーで、1995年に友人とアパレルブランド「ミルクフェド(MILKFED.)」を立ち上げ。(現在も日本に多くの店舗があります)
ファッション業界出身だけに作品内でもこだわりの衣装と小物が数多く登場し、登場人物の世界観を作り出す。
彼女の映し出す世界は、汚い世界ですら清潔で美しい。
それが原因で多くの批判に晒されていますが、美しい描写に何の罪もなく、単なる批評家の “やっかみ” としか思えない。
また、
” 音楽に合わせてゆっくりと時間をかけて観るのが好き。
表情だけでは伝えきれないことがたくさんあるんです。
私は物事を観察するのが好きで、セリフの多い作品には興味がありません。”
と語るように作品内の音楽の使い方が抜群で、映画音楽ではなく一般ミュージシャンの音楽を上手くチョイスしながら一瞬で観客に感情をインスパイアする技法は、ある種 “爽快” ですらあります。
これからも多くを語らない彼女なりのスタイルで、映像と音楽で “女性の疎外感と鬱屈” を美しく描いて欲しいですね。
【監督作品】
・プリシラ(2024)
・オン・ザ・ロック(2020)
・The Beguiled/ビガイルド(2017)
・ビル・マーレイ・クリスマス(2015) ※短編テレビ映画
・ブリングリング(2013)
・SOMEWHERE(2010)
・マリー・アントワネット(2006)
・ロスト・イン・トランスレーション(2003)
・ヴァージン・スーサイズ(1999)