原題 | The Bikeriders |
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製作年 | 2023 |
製作国 | アメリカ |
監督 | ジェフ・ニコルズ |
脚本 | ジェフ・ニコルズ |
音楽 | デヴィッド・ウィンゴ |
出演 | オースティン・バトラー、 ジョディ・カマー、 トム・ハーディ、 マイケル・シャノン、 マイク・ファイスト、 ノーマン・リーダス、 トビー・ウォレス |
もしこの映画にオースティン・バトラーが出演していなかったら、恐らく何の興味も惹かない映画になっただろう。
彼1人が出ているお蔭で、そして冒頭のエキセントリックで “ヤバい奴” 感満載の描写で、この映画がどういうエンジン音を奏でながらどういうルートを走ってゴールに辿り着くか、俄然観たくなる。
モーターサイクル・クラブとは何か?
一見すると「中年版暴走族」のようですが、半分は合っていて半分は異なる。
調べてみると、「バイクにルーツを発するが、今では凶悪犯罪組織になっているクラブもある」とのこと。
昔は暴走族だったものが “半グレ” 化したようなものだろうか。
でも発端はこの映画のように、大人になり切れない男性のコミュニティだったのでしょう。
カッコ良く言うと「労働者階級の日常に対する抵抗」であり、でも実際は 「”轟音響かせる鉄の塊” に乗っていると強く男らしくなった気がする」「家庭に居たくない男が友人とツルむための言い訳」程度だったのかもしれない。
彼は生きるより死ぬほうがマシ
では、オースティン・バトラー演じる主人公ベニーは何者なのか?
彼はクラブの創立メンバーと異なり、単にバイクが好きで自由を愛し(何で生計立てているのか不明ですが…)、仲間を重んじる人として描かれる。
無鉄砲でモーターサイクル・クラブのカリスマ的存在のような描かれ方をしつつ、実はクラブの信義とは距離を置く人なのだと途中で分かる。
それがこの映画のキーポイント。
一方でこれは、
「時間の経過や人の入れ替わりと共に設立当初の理念が薄れ、実態は別の組織になっていく」
という “多くの組織が陥るジレンマ” を描いた映画なのかもしれない。
その時、長い物に巻かれるのか、その場を立ち去るのか、人間が問われる。
残る者、別の職業に就く者、落ちぶれる者、行方不明になる者(「フロリダでエビ漁してるみたい。知らんけど。」と言われたマイケル・シャノン演じるジプコが良い!)、そして新たに加わる大勢の人々によって組織は再構築され、姿を変える。
だから、主人公が死よりも生を選択して落ち着く拍子抜けするラストは誠実で正しい人の判断と行動を描いていて、オースティン・バトラーの色気をこういう使い方で消費するとは意外でしたが、ジェフ・ニコルズ監督の意図を十分に感じることができました。