リリーのすべて

原題 The Danish Girl
製作年 2015
製作国 イギリス
監督 トム・フーパー
脚本 ルシンダ・コクソン
音楽 アレクサンドル・デスプラ
出演 エディ・レッドメイン、 アリシア・ヴィキャンデル、 マティアス・スーナールツ、 ベン・ウィショー、 セバスチャン・コッホ、 アンバー・ハード

「博士と彼女のセオリー」に続き、エディ・レッドメインが迫真の演技を見せて2年連続アカデミー主演男優賞にノミネート。
しかしアカデミー賞を受賞したのは、前年の「エクス・マキナ」で世界で20個近い助演女優賞を獲得したアリシア・ヴィキャンデル(助演女優賞)でした。
監督はトム・フーパー。2010年の「英国王のスピーチ」でアカデミー作品賞/監督賞を受賞し、2012年の「レ・ミゼラブル」でも助演女優賞を含む3部門を受賞している実績充分の監督が、この2作に続いて制作したのがこの作品です。

 

沼地に消えたりしない。沼地は僕の中にある。

時は1920年代。”性自認” という言葉が生まれる遥か昔、自らに潜む内なる女性としての認識は「沼」というイメージで表され、底知れぬ葛藤に苦しむ様子が想像できます。ただ、性自認に悩む多くの隠された人と違い、アイナーにはゲルダという理解ある伴侶がいた。だからリリーも存在を消さずに、もう一人の自分として実在できたのでしょう。

 

リリーは存在しない。彼女は創造物。

「自分とリリーは別人格であり同一ではない」と頑なに否定をするアイナー。しかし、徐々にアイナーはリリーとの境界を見失い、リリーこそが本当の人格なのだと自覚する。

その様子を間近で見ながら、愛するアイナーが失われてゆく恐怖に襲われるゲルダ。だが、いつしかリリーを受け入れていく。絶望の後の達観、変化、気づき。恐るべきゲルダの愛と許容力。だからこれは、むしろ “ゲルダの物語” なのだと途中で気づく。
感情を押し殺した「エクス・マキナ」から一転し、その長期に渡る感情の変遷を見事に演じ切ったアリシア・ヴィキャンデルが、この映画ではとてもとても素晴らしかったのです。

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