| 原題 | The King’s Speech |
|---|---|
| 製作年 | 2010 |
| 製作国 | イギリス・オーストラリア |
| 監督 | トム・フーパー |
| 脚本 | デヴィッド・サイドラー |
| 音楽 | アレクサンドル・デスプラ |
| 出演 | コリン・ファース、 ヘレナ・ボナム=カーター、 ジェフリー・ラッシュ、 ガイ・ピアース、 デレク・ジャコビ、 ジェニファー・イーリー、 ティモシー・スポール |
吃音は成長と共に改善することも多いですが、成人しても治らないとしたら、社会生活がとても不自由なものになるでしょう。
あなたが社会的に誰とも接しない “引きこもり” のような状態ならまだしも、たとえ主婦だとしても、もしかしたらスーパーで探し物が見つからず、店員に「固めるテンプルはどこにありますか?」と聞かなければならないかもしれません。
その時、「か…、か、固、、固、固める…」となったら、とても恥ずかしい思いをするでしょう。
でも、もしあなたが国王だったらスーパーで「固めるテンプル」なんて探す必要はありません。
とても喜ばしい状況ですね。
その代わり、年に何度か国民に向けて生でスピーチをしなくてはなりません。
これは困りました。
でも、ガラス玉を口いっぱいに頬張ることは勘弁です。
あなたのことは?
まずは殿下と、少し慣れたら “サー” と呼んでくれ。
名前で呼びたい。バーティでいいか?
皇族を愛称で呼ぶ言語聴覚士なんてどうでしょうか?
もちろん医師免許は持っていません。
ガラス玉は使いませんが、奇天烈な治療は他と似たようなものです。
しかし、不思議なことにアルバート王子はローグと友情を育み、治療も成果を上げ始めます。
なぜなのか?
映画を観る限り、対等な立場で接し、苦言を恐れず指摘を続けたからかもしれません。
王子が望んでいたのは治療よりも “皇室外の友” だったということです。
それがジェフリー・ラッシュ演じる変わり者だったとしても、王子には必要な人でした。
ここが映画のポイントで、この映画は “友情” と “克服” こそがテーマなんだと思います。
そして、王子は王となり、第二次大戦に突入する中、国を支え・牽引する役割を担っていく。
歴史物としては小さなストーリーですが、着眼点と時代設定が抜群でした。
お手柄だ 我が友よ。
ありがとう 陛下。
初めは対等な立場を求めたローグも、治療が一段落した後は一歩下がって立場をわきまえる。
呼び方が変わるこの一瞬で、”克服できた” ことを分からせる演出は最高です。
もう一つ。
献身的に夫を支えるヘレナ・ボナム=カーターは良かったですね。
かつてのコルセット・クイーンはティム・バートンとパートナーになって以降は “クセ強めな役” が多いイメージでしたが、この映画では人間味ある優しい役を演じていました。
この映画の中で唯一、普通の人だった気がします。
