KCIA 南山の部長たち

原題 The Man Standing Next
製作年 2019
製作国 韓国
監督 ウ・ミンホ
脚本 ウ・ミンホ、 イ・ジミン
音楽 チョ・ヨンウク
出演 イ・ビョンホン、 イ・ソンミン、 クァク・ドウォン、 イ・ヒジュン、 キム・ソジン、 ソ・ヒョヌ

16年間に渡り独裁を続けた韓国の大統領、朴 正煕(パク・チョンヒ)。
1979年に側近の諜報機関長官によって殺害されたが、その暗殺にまつわる権力闘争を描く。

フィクションだし誇張されて描かれていると分かりつつ、恐らく現実もこれに近い緊張感と恐怖があったのだろう。
独裁政権のどの国を見ても、政権内部は常に恐怖と隣り合わせ。
体制を維持するためには、国民に対してだけでなく政権内部に対しても恐怖を抱かせることで忠誠を誓わせるのだ。
ただ、忠誠心にも限界があり、求めすぎると逆に崩壊してしまう。

 

この地ではリンカーンは神だ。だが撃たれて死んだ。

自由の国の建国の父と自国の独裁者を比べるのはどうかと思うが、「英雄であっても凶弾1つで葬り去られる」という例えに過ぎない。
それが韓国の場合は側近による暗殺事件で、この映画ではその大きな歴史的事件に基づき、緊張感あるサスペンスを融合しているところが面白い。
事実なので、どういう結末を迎えるかは皆が知っている。
だから観る者を惹きつけるストーリーで、そこに至るまでの “闇” を “権力闘争に追い込まれる男” という形で描く。
その表現がとても巧みで、裏切りと疑心暗鬼によってバランスを崩していく状況が見ていて恐ろしい。
そして、独裁者がいなくなっても軍事政権は終わらず、次に権力と金を手に入れた者が体制を維持するという結末=事実もまた恐ろしい。

この事件の後どうなるかは、2023年の映画『ソウルの春』を見ると良く分かります。
描き方はまったく違いますが、ほとんどこの映画の続編といっていいでしょう。

ちなみに、朴 正煕は娘の朴槿恵も18代の大統領。
そもそも軍事独裁政権時の大統領の娘が選ばれることに驚きだが、弾劾により失脚。
権力闘争の血筋とも思いつつ、韓国の大統領が引退後に逮捕されることは常でした。

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