風とライオン

原題 The Wind and the Lion
製作年 1975
製作国 アメリカ
監督 ジョン・ミリアス
脚本 ジョン・ミリアス
音楽 ジェリー・ゴールドスミス
出演 ショーン・コネリー、 キャンディス・バーゲン、 ブライアン・キース、 ジョン・ヒューストン、 ジェフリー・ルイス

1904年にモロッコで起きたアメリカ人誘拐事件に基づいて、アメリカ帝国主義の勃興を描く。
魅力的なイスラム教の族長ライスリを演じるのはイギリス人のショーン・コネリーなので、完全に西欧視点の映画ですが、イスラムも欧米も善悪入り混じる立場で描かれているので、そういう意味では公平な視点に立った映画だと言えます。

合法性のために、美しさを台無しにするな

ライスリの目的は「欧米を介入させ、スルタン(イスラム国家における君主)を弱体化させること」
ルーズベルトの目的は「軍事介入することで世界におけるアメリカの立場を強化すると共に、選挙でアピールするため」
国務長官のジョン・ヘイが軍事介入の違法性を指摘すると、ルーズベルトは “法は守らなくて良い” と言い放ちます。
また、私生活でも狩りや射撃、ボクシングをこよなく愛す。
現在まで繋がるアメリカの帝国主義、介入主義、建前主義を顕著に表す場面です。
また、自分たちが征服したネイティブ・アメリカンを従えながらライスリを無法者(desperado)と呼ぶシーンも象徴的で、アメリカの ”建国のためなら他民族を犠牲にしてよい”、”状況次第では法を守らなくて良い” という矛盾した考えを良く表しています。

あなたは風で、私はライオン
私はライオンのように自分の場所に留まるが
あなたは風のように自分の立場を決して知ることはないでしょう

この映画のタイトルになった、ライスリからルーズベルトに送られた手紙の内容です。
ライスリは土地に根差す “文化”、”種族”、”歴史”、”文明” に基づいて行動しますが、「アメリカにはそれが無いよね?」と皮肉する言葉です。
逆に、何かに縛られることなく自らの価値観に基づいて行動できるのがアメリカの強みなのかもしれません。
だから、ライスリは “歴史に埋もれゆく古い国家”、ルーズベルトは “これから強大化する新しい国家” という対比と捉えることも出来ます。

 

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