東京ゴッドファーザーズ

英題 Tokyo Godfathers
製作年 2003
製作国 日本
監督 今 敏
脚本 信本 敬子、 今 敏
音楽 鈴木 慶一
出演 江守 徹、 梅垣 義明、 岡本 綾、 こおろぎ さとみ、 飯塚 昭三

今 敏が『PERFECT BLUE』『千年女優』で描いた “何度も行き来する現実と非現実”“執着心が行きつく先” という共通テーマはほとんど無くなり、時系列に沿って現実世界で物語は進んでいく。
奥深い物語だった過去2作から、なぜここまで大きく舵を切ったのだろう?
監督のインタビューでは、「違うタイプの物語にチャレンジしたかったが、物語を考えるとどうしても夢と現実の境界が出てきてしまうため、思い切ってシンプルで分かりやすいストーリーにした」そうです。
クリエイターとして既に何らかの壁を感じていたのか、ただ新たな領域に踏み出そうとしたのか、いずれにせよこの作品は良くも悪くも “普通” なのです。

主要な登場人物は、ホームレス・家出少女・捨て子など、”世の中から捨てられた人たち”。
性別・年齢・生い立ちの異なる3人は皆、家族に対する後ろめたさを感じているが、神の使いである天使によって家族と再会を果たす。
社会に光を取り戻したいのなら、小さな子供に目を向けることから始めないといけない。
そういうメッセージなのかもしれません。

一方、2作品と共通するテーマが、”幸子” と名乗る女性を借りてラストで登場します。
彼女は生まれたばかりの子供を亡くしたトラウマに囚われ、”現実と非現実” の判断がつかなくなり、子供への “執着心が行きつく先” として、他人の子供を盗むという暴挙に走ります。
『PERFECT BLUE』にも似たような人物がいましたよね。
この作品は、ほのぼのとしたストーリーと思いきやラストでいきなりダークな展開が差し込まれますが、それこそが全作に通じる「今 敏の共通テーマ」なのです。

 

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