| 原題 | Totem |
|---|---|
| 製作年 | 2023 |
| 製作国 | メキシコ・デンマーク・フランス |
| 監督 | リラ・アビレス |
| 脚本 | リラ・アビレス |
| 音楽 | トマス・ベッカ |
| 出演 | ナイマ・センティエス、 モントセラート・マラニョン、 マリソル・ガセ、 サオリ・グルサ、 マテオ・ガルシア・エリソンド |
監督のリラ・アビレスは舞台や脚本を学んだ後、俳優としてのキャリアも経たうえで、2018年に監督となりました。
初監督作の『The Chambermaid(原題:La camarista)』は国際映画祭で評価され、デビュー作にしてアカデミー賞国際長編映画賞のメキシコ代表にも選ばれました。
そして2作目がこの映画で、インディーズ色が強いですが無茶苦茶レベルが高く、非常に重いテーマが込められた作品です。
映画ではストーリーとして何も語られません。
画面の中にあるのは、様々な人間の感情が交錯した雑多な “日常” であり “空気感” です。
セリフはすべて日常会話として “空気中” を飛び交います。
そこには説明じみたセリフなど一切ありません。
主人公は7歳の少女ソルです。
父親は病気療養中で離れて暮らしていますが、今日は父親の誕生日を祝うパーティがあり、久々に会えることになりました。
でも誰もソルの思いを汲み取ってくれません。
母親は娘を置いて仕事に行ってしまいます。
親戚たちは皆忙しく、ソルは画面の中にいますが中心ではありません。
そして、なぜ父親は重病なのにパーティが開かれるのでしょうか?
大人は何も説明しませんが、ソルは徐々に何かを感じ取る一方で疎外感も増幅します。
子供が何かを理解するのに言葉は必要なく、感覚的に分かってしまうもの。
理解力は低くても、受信感度は高いのです。
だから “分かっていない” のに、”分かってしまう” のです。
大人が見せる優しさは子供にとって優しさでも何でもなく、子供の感情を妨げる “壁” に過ぎません。
そして喪失の本当の意味を知る前に、”大人の無意味な世界” を知ってしまうのです。
社会ルール的な大人の優しさの多くは子供の脇を通り過ぎ、届くことはありません。
ソルはパーティなど望んでいません。
ただ、父親と一緒の時間を過ごしたいのです。
そうだな僕が願うことは…
ないかな
ラストシーンは胸が締め付けられます。
父親は娘に残す言葉を紡ぎだす余裕も余力も残っていないのです。
ソルはすべてを悟ります。
虚飾に彩られた宴は父親の最後の体力を奪い、でも「宴は必要」と信じる大人たちがいて、世界は子供たちを置き去りにするのだと。
それがラストの圧巻のショットなのです。
とても7歳には見えない表情で、大人の世界を知ってしまった虚無感と怒りが滲むように現れています。
少女は一人で抱え込むしかないのです。
実は凄まじい、実に凄まじい映画でした。
