ツイン・ピークス ローラ・パーマー最期の7日間

原題 Twin Peaks: Fire Walk with Me
製作年 1992
製作国 アメリカ・フランス
監督 デイヴィッド・リンチ
脚本 デイヴィッド・リンチ、 ロバート・エンゲルス
音楽 アンジェロ・バダラメンティ
出演 シェリル・リー、 モイラ・ケリー、 レイ・ワイズ、 クリス・アイザック、 カイル・マクラクラン、 メッチェン・アミック、 パメラ・ギドリー、 ヘザー・グラハム、 ダナ・アシュブルック

1990年代初頭にデイヴィッド・リンチが監督したTVドラマ『ツイン・ピークス』は、人気ドラマという枠を超えて世界的な社会現象を巻き起こし、その人気と影響力は「熱狂的なブーム」から「カルト的な支持」へと変化していきました。
第1話の視聴者数は約3,460万人で、当時の視聴世帯の33%が視聴するというテレビドラマのシーズン最高記録を樹立し、「Who killed Laura Palmer?(誰がローラ・パーマーを殺したか?)」というフレーズが流行語となり、犯人を予想することが全米の日常会話の一部となりました。
また、当時のソ連大統領ゴルバチョフが、「犯人は誰か」とパパ・ブッシュ大統領経由でリンチ監督に探りを入れた、イギリスのエリザベス女王が放送時間に間に合うよう公務を切り上げたといった逸話(噂)が流れるほどの熱狂ぶりでした。

日本では確か深夜枠で放送されていましたが、当時を知っている人は日本でも話題になったことを憶えているのではないでしょうか。
劇中で出てくる「チェリーパイ」が密かに人気になったとか、懐かしいですね。

ですが、シーズン2の途中で犯人が明らかになった途端に視聴率は急落し、デイヴィッド・リンチを含む制作陣は継続を望みましたが、ABC放送が却下して終わりを迎えました。
デイヴィッド・リンチが生み出す芸術的で不安を煽る “構図” と “ショット”、奇抜で謎めいた “演出” に「観るべき価値」があるのですが、テレビ視聴者は映画ファンとは違い、そこ見ずに「犯人捜しをしていただけ」という悲しい現実です。

テレビシリーズの打ち切りを受けて、すぐさまデイヴィッド・リンチは映画化に着手します。
カイル・マクラクランも出演を渋るなど、出演者選びと説得に労力を要しましたが、フランスからの出資も取り付けて何とか映画化にこじつけます。
ですが編集後も5時間超!という大作になってしまい、大幅なカットを繰り返して何とか135分に縮めます。
この影響で多数の出演者が消えていなくなりましたが、2014年のBlu-ray版で削除場面が公開されたようです。良かったですね。

 

宇宙に放り出されたらゆっくり落ちていく?それとも急降下?

急降下よ。
長いこと何も感じなくて、それからパッと燃え上がる。永遠に。
天使も助けてくれない。天使は行ってしまったから。

映画ですが、ドラマでは “死体” か “ビデオの中” しか登場しなかったローラ・パーマーを「魂が崩壊していく一人の人間」として生々しく描いた作品として、演じたシェリル・リーを含めて評価すべき作品です。
また、性的虐待や依存症、絶望や悲劇といったテーマを正面から描き、それなりの重みや社会性もありますが、テレビ版のファンからすると「ダークすぎる」「難しすぎる」「クーパーはどこへ行った?」というブーイングの嵐でした。
結局、「コアな映画はテレビファンを満足させられない」という永遠の課題が再認識された形です。
コアな映画ファンとしては、リンチ監督の特殊な才能が認められず悲しいですね…

冒頭で出てくる謎の女性リル(赤い服で変な顔)ですが、キンバリー・アン・コールという演劇教師だそうです。
本人はこの強烈な役が更なる映画出演に繋がると期待していたようですが、「あの役が奇妙で強烈すぎる」という理由でその後の映画出演はゼロという残念な結果となりました。

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