| 原題 | Changeling |
|---|---|
| 製作年 | 2008 |
| 製作国 | アメリカ |
| 監督 | クリント・イーストウッド |
| 脚本 | J・マイケル・ストラジンスキー |
| 音楽 | クリント・イーストウッド、 クリスティン・ヤバラ |
| 出演 | アンジェリーナ・ジョリー、 ジョン・マルコヴィッチ、 ジェフ・ピアソン、 マイケル・ケリー、 ジェフリー・ドノヴァン、 コルム・フィオール、 ジェイソン・バトラー・ハーナー |
この映画は、名匠クリント・イーストウッド監督が、実際に起きた事件を元に描いた社会派サスペンス。主演がアンジェリーナ・ジョリーという存在感抜群の大スターなので、彼女を悲劇の主人公に仕立て上げた映画的ストーリーなのではと思ってしまいますが、実際は “警察の腐敗”、”猟奇殺人” という2つのサブストーリーが展開され、その都度観客を異なる感情へと導きます。しかし、きちんと最後に失踪事件へと帰着させるあたり、イーストウッド監督の仕事ぶりはやはり今回も堅実です。
題名の「Changeling」とは “すり替えられた子供” を意味する言い伝えですが、この映画では真実がすり替えられ、被害者である母親が精神疾患にすり替えられ、その結果、警察の失態は問題解決へとすり替えられる。どこかから別の子供を連れてきて母親に与えて無理やり解決させ、反論する母親を精神病院に強制収容するなんて、そんなバカげたことがあったのかと思いますが、この映画の大部分は事実です。脚色されているのは “ノースコットから逃げた少年の中にウォルターがいた” という部分だけで、それ以外はすべて事実であり、ウォルターはノースコットの犠牲者だった可能性が高いと今でも考えられているそうです。様々な悪行が様々な映画になっているロサンゼルス市警ですが、ここまで来ると腐敗以上に高高度の堕落ぶりに怒りが収まりません。しかし、それが “権力の怖さ” であり、“権力の実態” なのでしょう。
主演はなぜアンジェリーナ・ジョリーに決まったのでしょうか? アンジェリーナ自身はこの役に乗り気ではなかったのですが、候補者の中からイーストウッド監督が “時代性にあった雰囲気” を感じ取って決めたそうです。彼女の演技は非常に素晴らしく、イーストウッド監督が得意とする「敢えて映画的な盛り上げ方をしない」抑制された演出においても、とても説得力のある母親を演じていました。しかし、実際の母親は普通の一市民であり、立っているだけで “華” のある存在ではなかったので、もう少しマイナーな女優を配役しても良かったのでは?と思ってしまいます。アンジェリーナ・ジョリーが何度も涙を流して訴える宣伝を見て、逆に “そういう映画ではないのに…” 感が出てしまいました。マーケティング的には正しいかもしれませんが、映画の中身をまるで表していません。
彼女をサポートするジョン・マルコヴィッチと弁護士役のジェフ・ピアソンは、正義と良心という重荷を背負いつつ地に足の着いた佇まいを醸し出し、こちらも素晴らしい演技でした。ついでにノースコットを演じたジェイソン・バトラー・ハーナーの決して本心を伺い知れない、得体のしれない気持ち悪さも、過剰な演技とリアリティの境界ギリギリを攻めており、良い意味で?不快な気持ちになりました。
