ファンシー・ダンス

原題 Fancy Dance
製作年 2023
製作国 アメリカ
監督 エリカ・トレンブレイ
脚本 エリカ・トレンブレイ、 ミシアナ・アリス
音楽 サマンサ・クレイン
出演 リリー・グラッドストーン、 イザベル・ディロイ=オルソン、 ライアン・ベガイ、 クリスタル・ライトニング、 オードリー・ヴァシレフスキー、 シェー・ウィガム

日本人にはほとんど知られていませんが、アメリカには「インディアン居留地」が幾つもあり、自治が認められているのはこの居留地だけになっています。居留地によっては自由は少なく産業も無く、貧困とアルコールとドラッグから抜け出せない場合も珍しくなく、結局は差別覚悟で外に出ていくしかありません。主演のリリー・グラッドストーン自身も居留地で生まれ育っています。この辺りのリアルは、クロエ・ジャオ監督の『兄が教えてくれた歌』(サウスダコタ州パインリッジ居留地)を観ると良く分かるかもしれません。ただ今回の映画で描かれる居留地は、比較的裕福なオクラホマ州のセネカ=カユーガ族の居留地で、居留地がモザイク状に点在しており、日常生活でも居留地内外を頻繁に移動しています。だから映画を観ていると、今いる場所が居留地の中なのか外なのかすぐには見分けがつきませんが、場所や事件によってはFBIが管轄するなど制度が大きく異なり、居留地を “一般社会に埋め込まれた別の法的・文化的空間” として描いています。ちなみに監督のエリカ・トレンブレイ自身もセネカ=カユーガ族です。

この物語の恐ろしいところは、「行方不明者を真剣に探すのは姉だけ」「社会は行方不明者を探すことより、子供(ロキ)を伯母(ジャックス)から引き離すことに夢中」という点です。どうやら居留地内でも先住民族か否か、その土地の法的区分(州ごとに司法権を持つ地域が異なる)、犯罪の内容などによって、部族警察、州・郡警察、FBIと管轄が異なり、今回は管轄を跨いだことで捜査が滞る様子を描いています。また、パウワウでのラストシーンの祈りや踊りに繋がりますが、先住民族の失踪事件は特に優先度が下がる傾向が見てとれます。一方、ジャックスに犯罪歴があることでロキは白人の祖父母夫妻に強制的に引き取られ、祖父母は先住民族の思想や文化を無視して白人文化に引き込もうとします。これは無意識の「同化政策」であり、特に欧米的価値観では顕著に見られるケースだと思われます。

みんなで踊ろう
失踪者や殺された仲間のために
正義と、暴力の終結のために
早すぎる死を悼むために

映画のラスト、パウワウでアナウンスが流れますが、殺された者だけでなく失踪者がいかに多いかが分かるシーンになっています。つまり、捜査されないがために死を確定できない者も大勢いるのです。タウイが殺された可能性が高いことをロキ以外は分かっていますが、まだ子供であるロキにとって母は「パウワウに行けば会えるかもしれない失踪者」なのです。でももう戻ってくる可能性は低いと知り、ジャックスと踊ることを受け入れ、踊ることで自己のルーツと文化を心に刻み付けました。恐らくこの後ジャックスは有罪となり収監され、ロキは祖父母夫妻と暮らさなければなりません。でももうこれで、白人文化に同化されることはないでしょう。

 

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