| 原題 | Fremont |
|---|---|
| 製作年 | 2023 |
| 製作国 | アメリカ |
| 監督 | ババク・ジャラリ |
| 脚本 | カロリーナ・カバリ、 ババク・ジャラリ |
| 音楽 | マフムード・シュリッカー |
| 出演 | アナイタ・ワリ・ザダ、 グレッグ・ターキントン、 ジェレミー・アレン・ホワイト、 ヒルダ・シュメリング、 ティムール・ヌスラッティ、 エディ・タン、 ジェニファー・マッケイ |
これはサンダンス版『マッチ工場の少女』なのか。
確かにカウリスマキ映画のような構図、モノクロ、短く棒読みのセリフ、弱者視点という多くの共通項が見られます。ですが主人公は本家ほど振り切った行動は取らず、勇気を振り絞ってフォーチュンクッキーに電話番号を忍ばせるのが精一杯です。他人のために言葉を書き留めますが、自分のための言葉を見つけることはできません。
長続きするのは愛を語ることができる人だ
そして優れた愛の語り手は自分を愛している
彼女はアフガニスタンからアメリカへの移民であり、アメリカ軍の通訳をしていたという厳しい過去を持ち合わせています。その過去を前面に出すだけで十分重い映画になりますが、この映画は敢えて重くせず、カウリスマキ映画ほどシニカルにも寄せず、一歩引いた優しい目線で幸せになり切れない主人公を見つめます。ストーリーの背景には “戦争移民”、”郊外の孤独” がありますが、孤独を脱するために現代的なSNSではなくフォーチュンクッキーを使うという、何とも古典的で平和で可愛らしくズレた発想をします。その緩さがこの映画の良いところで、ラストも「これは果たして希望なのか?」と不思議に思う曖昧な終わり方をします。
監督のババク・ジャラリはイラン生まれでロンドンを拠点に活動してきた映画監督・脚本家・編集者なので、実はアフガン人ではありません。(アフガニスタンは「アフガン人の土地」という意味なので、主人公のセリフにあるように人種の呼び方はアフガニスタン人ではなくアフガン人が正しいようです)
この映画は4作目ですが、いずれも「故郷を離れて居場所を持てない人」をユーモアを交えてミニマムに描いてきました。
なお、フォーチュンクッキーはアメリカの中華料理店で多く出されていますが、実は日本の文化だそうです。日本庭園の庭師がサンフランシスコで広め、それがいつしか中華料理店で真似するようになったのだとか。『アイアンマン3』の中で「知ってるか。フォーチュン・クッキーは中国のものじゃない。日本のレシピでアメリカ人が作った。」というセリフがあるそうです。脚本家も良く調べましたね。
