| 原題 | Grand Tour |
|---|---|
| 製作年 | 2024 |
| 製作国 | ポルトガル・イタリア・フランス・ドイツ・日本・中国 |
| 監督 | ミゲル・ゴメス |
| 脚本 | マリアナ・リカルド、 テルモ・シューロ、 モーレン・ファゼンデイロ、 ミゲル・ゴメス |
| 撮影 | ルイ・ポッサス、 サヨムプー・ムックディプローム、 グオ・リャン |
| 出演 | ゴンサロ・ワディントン、 クリスタ・アルファイアチ、 クラウディオ・ダ・シルバ、 ラン=ケー・トラン、 ジョルジュ・アンドラーデ |
ポルトガルの鬼才ミゲル・ゴメス監督の作品は、2024年カンヌ国際映画祭で監督賞を受賞。
アジア各国を舞台にフィクションとノンフィクションが入り混じった映画的世界とストーリーが展開される。ベルリン国際映画祭で国際批評家連盟賞を受賞した『熱波』と同様に、前半と後半で別の物語が展開しますが、今回は “同じ物事を別の時間軸や視点で捉え直す” という深みはなく、評価の難しい映画的チャレンジをしています。
前半は “エドワードの逃避行” ですが、あらゆる現実や責任を拒絶し、虚無的に逃避し、様々な場所を彷徨うメランコリックで幻想的なストーリーです。どの国、どの場所においても、彼は人に心を開くことはありません。後半は “モリーの追跡劇” で、前半とは一転して過剰だが笑えないコメディ調のストーリーです。エドワードとは違い、彼女は積極的に人々と関わります。それらが、欧米人から見た “アジアの奇妙で興味深いイメージ” の世界で展開されます。これは一体何の映画なのでしょうか?
信念を捨てるのは悲しいこと
それは違う 自由になるんだ
監督のミゲル・ゴメスによると、“現実のアジアと捏造のアジアを織り交ぜた旅行記” を作りたかったそうです。だから実世界を映した “現実のアジア” の映像と、セットで撮影した異国趣味に満ちた “捏造のアジア” の映像が入り乱れるのです。映画とは “捏造という物語化” であり、観客にも「映画は現実の複製ではない」「これは偽物の映画の世界だ」ということを受け入れさせたかったのだそうだ。だから突然ラストで撮影スタッフが映り込み、役者が現場から去っていく映像が流れるのです。とはいえ、これまでの映画では数多の意識的/無意識的な捏造の世界が消費されてきたわけで、それをこの映画で意図的に見せられても、狙いが良く分からないのも確かです。そして、監督のもう一つの狙いはスクリューボール・コメディなど古典的な映画手法を取り入れたかったそうで、だから後半のモリーは敢えて下品な笑いでグイグイ迫るのです。その辺りもコメディ要素を入れたかった狙いが今一つ良く分からないのです。というわけで「やりたかったことは分かるが、この映画はどうなのか?」という疑問がどうしても拭えません。批評家たちにはとても評価されているんですけどね… きっとゴメス監督は、「映画はこうあるべき」という信念を捨てて自由になったんだと思います。
ちなみに、ゴック役の女優は『青いパパイヤの香り』で一世を風靡したトラン・アン・ユン監督と、彼の多くの映画で主演を務めた女優トラン・ヌー・イエン・ケー夫妻の娘だそうです。
