| 原題 | The Assassination of Jesse James by the Coward Robert Ford |
|---|---|
| 製作年 | 2007 |
| 製作国 | アメリカ |
| 監督 | アンドリュー・ドミニク |
| 脚本 | アンドリュー・ドミニク |
| 音楽 | ニック・ケイヴ、 ウォーレン・エリス |
| 出演 | ブラッド・ピット、 ケイシー・アフレック、 サム・ロックウェル、 ポール・シュナイダー、 ジェレミー・レナー、 サム・シェパード、 メアリー=ルイーズ・パーカー、 ズーイー・デシャネル |
撮影の名手ロジャー・ディーキンスの味わい深い映像が印象的な西部劇。
西部劇と言いつつ形を借りているだけで、中身は “英雄の実像” と、ある若者が抱く “尊敬から憎悪への心理変化” を描きます。
が、159分は長い!
物語が動き出すのは120分を過ぎてからで、それまでは映画1本分の時間があるのに、とにかく登場人物の人間関係が良く分からないのと、唐突に場所が変わり、唐突に問題が起こるので良く分からないまま見続けなければなりません。
ジェシーを殺そうと企むジム・カミンズという重要人物がいて、エド・ミラーがジェシーとの会話でポロリとこぼし、後にジェシーとディックがジムを殺しに行くのですが、映像に一切出てこない。絶対にどこかで見落としたと思い、20分くらい前から見直すが、やっぱりどこにも出てこない…
ボルトン家で過ごしていたウッドとディックが突然、ウッドの父親の家に行ってトラブルを起こす。でもすぐにボルトン家の生活に戻り、突然ウッドがディックを殺そうとする。原因は分かりますが、テンポが遅いのに唐突に展開するから分からなくなるのです。
しかし、120分を過ぎてからの人間ドラマは見ごたえがあります。
義賊として英雄視されていたジェシー・ジェームズは肉体的にも精神的にも疲れ、妻子のいるすぐ傍ですべてを終わりにする覚悟を決めます。だから自らガンベルトを置いて背を向け、自分への尊敬が憎悪へと変わったロバートに敢えて撃たれることで、ロバートに対して「お前は何も分かっていない」と突き付けるのです。
“尊敬していたはずなのに徐々に心が屈折して憎むようになり、やがて殺してしまう” というロバートの心理変化は、『キング・オブ・コメディ』や『アマデウス』、『リプリー』などで何度も描かれてきた典型的なパターンです。
しかし、“尊敬が承認されないことで屈辱を抱く”『キング・オブ・コメディ』、“尊敬が才能への嫉妬に変わる”『アマデウス』、“尊敬が同一化願望と簒奪へと変わる”『リプリー』というように、心理変化の原因はそれぞれ異なります。
『ジェシー・ジェームズの暗殺』は、“尊敬が裏返って相手と自己、双方の嫌悪に変わる” といったところでしょうか。
心理学用語で言うと、理想化(過度に誇大視すること)と脱価値化(価値のないものとして過小評価すること)です。理想化していた万能的期待が満たされない時に、脱価値化が起こるそうで、これは児童だと正常な感情だが、成人はこのような極端な感情変化を通常は抱かないそうです。
というように、この映画はロバートの短絡的だが根深い心理変化が “どういう類のものか” を観察する映画なのかもしれません。
