リトル・シスター 秘密

原題 La petite dernière
製作年 2025
製作国 フランス・ドイツ
監督 アフシア・エルジ
脚本 アフシア・エルジ
音楽 アミネ・ブハファ
出演 ナディア・メリティ、 パク・ジミン、 アミーナ・ベン・モハメド、 ムウナ・スアレム、 アロイーズ・ソバージュ

2025年のカンヌ国際映画祭で女優賞とクィア・パルムを受賞した作品。ムスリムでレズビアンである少女ファティマの葛藤と成長を、等身大の視点から描いた青春映画。
冒頭で主人公のファティマはヒジャーブを被り、メッカの方角を向き、アッラーに祈りを捧げているように、彼女はムスリムです。宗教とクィアの対立は常にファティマの周囲をハチのように飛び回りますが、すぐに彼女を刺すことはありません。ファティマはクィアを認めない宗教感に苦しめられているのではなく、別のものに苦しめられているのです。彼女は高校にジャージで通い、不良っぽい男どもとツルんでいますが、実は賢く、喘息に苦しみながらもサッカーを愛し、走ることも大好きで、それと同じくらい女性が好きでした。初めは半信半疑でしたが、ゲイの同級生にそのことを見抜かれ、ようやく自覚します。そして、その同級生に対してお礼を言う代わりに “顔面パンチで彼の大事な金眼鏡をぶっ壊す” という酷い暴挙に出ますが、彼の金眼鏡を後で弁償したという話は出てきません。

そこから彼女は冒険の旅に出ます。出会い系アプリで怪しいオバ様たちと会って様々なレクチャーを受けますが、彼女は「出身はエジプト」「7人兄弟」と言って自分の素性を明かしません。しかし、病院のリハビリ施設で韓国系ゆりやんレトリーバーのジナ(『ソウルに帰る』の女優さん)と出会い、自然と打ち解け、ようやく自分の素性を明かせる恋人が見つかりました。しかしジナのうつ病によってすぐに追い出されてしまい、彼女は再び自分の周りに壁を築き始めます。ファティマは何年間もずっと周囲に壁を作り、常に感情を抑えることで自分を守っているのです。クィアを受け入れても彼女は “鎧と盾” を手放すことはなく、冒険の旅で仲間とパーティーをしても、仲間を見つけてパーティーを組むことはありませんでした。旅の本当の目的は相手を探すことではなく、“敵を見つけて倒す” ことなのかもしれません。

 

確かに同性愛は禁じられている
だかイスラム教だけではない
キリスト教もユダヤ教も
神を崇める宗教が絶えず禁じてきた

映画の終盤で、ファティマはイスラム教のイマームの元を訪れて相談しますが、返ってきた答えは分かり切った内容ばかりでした。彼女は宗教に救いを求めることができず、自分で生きていくしかありません。母親は何も言わず見守ってくれますが、彼女は痛みから解放されることもなく、運命を受け入れることもなく、誰かに癒されることもなく、悩みを抱えながら取り残されます。倒すべき敵は自分の中にありますが、映画内では見つけて倒すことはできませんでした。ただ、映画は終わってもこの物語が終わることはありません。彼女の人生はまだまだ続くのですから。

 

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