海辺の恋

原題 L’amour à la mer
製作年 1965
製作国 フランス
監督 ギィ・ジル
脚本 ギィ・ジル
撮影 ジャン=マルク・リペール
出演 ジュヌヴィエーヴ・テニエ、 ダニエル・ムースマン、 ギィ・ジル、 ジュリエット・グレコ

ヌーヴェルヴァーグ全盛期にデビューしたが、当時は評価されず “忘れられた作家” として死後に再評価されたギィ・ジル監督の長編デビュー作。
ストーリー性が低く秘密めいて詩的な表現で、かつ内容もメランコリックだったために当時は一般からも批評家からも今一つ評価されず、フィルムの所在も不明でした。
しかし、2003年にラ・ロシェル国際映画祭で回顧上映が開かれて再評価が始まり、2005年に短編の再編集、2008年に過去作がDVD化され、2014年11月5日〜22日にパリのシネマテーク・フランセーズで大規模な回顧上映が行われたことで、その名前は広く認知されるようになりました。
シネマテーク・フランセーズの評によると、「ギィ・ジルは “ヌーヴェルヴァーグの隠し子” のような存在で、どの流派にも属さない特異な感性の持ち主であり、裏を返すとゴダールやトリュフォーのような “注目度の高い斬新さ” で語られにくく、歴史の本流から外れてしまった」とのことです。

この映画で描かれたような、”静止画の挿入” や “モノクロとカラーの交錯” を多用して感情の残響や断片的な記憶を表現する手法は非常に芸術的ですが、公開当時はそうした表現が理解されず、この映画の持つ強力な美点が「散漫」「分かりづらい」と受け取られました。シネマテークも、「彼の映画はきわめて親密で脆く、静かな孤独や過ぎ去った時間の感覚を強く帯びる作風」と説明しているので、映画大国フランスだけあってヌーヴェルヴァーグの本流から少し外れただけで正当な評価を得られず埋もれてしまったとも言えます。

ギィ・ジルの映画ですが、モノクロとカラーの断片的な映像から驚異的な編集(モンタージュ)によって連続したイメージを作り出し、バラバラな時系列の中に感情の機微を貼り付けていきます。モノクロとカラーは時間ではなく感情を表し、映画の進行も時間とは関係なく、現在/過去、記憶/感情、パリ/ドーヴィルという対比が混ざり合いながら自由に行き来します。編集後の結果を初めに計算しているとは思えないので、恐らくジル監督の頭の中のイメージを断片的に撮影し、後でうまく編集したとしか思えません。芸術的なショットと芸術的なモンタージュのハイレベルなブレンドは同時期の他の監督の中でもかなり異色で、誰にも真似できないものでしょう。

しかし、”恋の痛み” というテーマが “良い思い出” と “辛い思い出” でできており、不安定なものである以上、この映画の断片的な構成自体がテーマを体現しており、「テーマ=様式」そのものであるとも言えます。

60年も前に作られた映画とは思えない、同時期の映画に比べても驚くほどハイセンスな映画でした。
なお、ギィ・ジル監督自身も友人役でこの映画に出演しています。

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