| 原題 | Les miserables |
|---|---|
| 製作年 | 2019 |
| 製作国 | フランス |
| 監督 | ラジ・リ |
| 脚本 | ジョルダーノ・ジェデルリーニ、 ラジ・リ |
| 音楽 | ピンク・ノイズ |
| 出演 | ダミアン・ボナール、 アレクシ・マナンティ、 ジブリル・ゾンガ、 ジャンヌ・バリバール |
この作品は『レ・ミゼラブル』というタイトルにも関わらず、登場人物が劇中で歌い出すことはありません。
歌う代わりに登場人物は皆怒りを募らせていきます。そして最後は小説と同じように、怒りは暴動へと発展します。
少年イッサは、ジャン・ヴァルジャンと同じように盗みを働きます。しかし原作が子供たちを救うためのパンだったのに対し、イッサはライオンを盗み出します。ライオンは “力の象徴” であり、イッサは力を手に入れようと子ライオンを盗んだのかもしれませんし、囚われの身で虐待的な躾を受けている親ライオンの子供に自分自身を重ね合わせたのかもしれません。小説ではパン泥棒は「貧しい社会」の象徴でしたが、ライオン泥棒は「社会に燻る危険の火種」を象徴しているとも言えます。しかし、子ライオンを盗んだことで、別の共同体の威信を傷つけてしまいました。どちらもちょっとした盗みの行為が、後に大きな問題を引き起こすのです。
小説の『レ・ミゼラブル』と同様に、警察はイッサを追いかけます。小説でも警察や司法は “貧しい者を罰する機能” でしたが、この映画でも警察は大人の犯罪を見逃しながら、子供たちの犯罪を追い詰めます。冒頭で少女の大麻を厳しく咎めるように、”大人の社会” は子供たち守るのではなく、逆に迫害している様子を映し出します。小説では “法の正義” と “本当の正義” のせめぎ合いでしたが、この映画では “大人のルール” と “本当の正義” のせめぎ合いです。子供には善悪を押し付けつつ大人社会では善悪が守られないため、最後に子供たちが一致団結して立ち上がり、大人に牙をむくのです。それがこの映画のテーマであり、本当に訴えたい社会の現実なのです。
