ノートルダム 炎の大聖堂

原題 Notre-Dame brule
製作年 2021
製作国 フランス・イタリア
監督 ジャン=ジャック・アノー
脚本 ジャン=ジャック・アノー、 トマ・ビデガン
音楽 サイモン・フラングレン
出演 サミュエル・ラバルト、 ジャン=ポール・ボーデス、 ミカエル・チリニアン、 ジェレミー・ラウールト、 マクシミリアン・セヴェリン、 ディミトリ・ストロージュ、 ピエール・ロッタン

2019年に起きたパリ ノートルダム大聖堂の火災と消火活動を再現した作品。監督は『薔薇の名前』や『愛人/ラ・マン』『セブン・イヤーズ・イン・チベット 』など、歴史や文学、自然を舞台に評価の高い作品を残してきたジャン=ジャック・アノー。2000年の『スターリングラード』以降、失敗作はあれど目立ったヒット作もなかったアノー監督が、最後になるかもしれない作品として選んだのはパリ市民が心の拠り所を失った哀しみを再現することでした。実際はアノー監督の持ち込み企画ではなく、映画制作会社パテの会長ジェローム・セドゥ(レア・セドゥの祖父)から依頼されたことがきっかけです。最初はドキュメンタリーでの依頼だったためアノー監督は断りましたが、記録を調べるうちに非常に映画的な展開だと分かり、再現映画として実現することになりました。アノー監督はパテ社で『小熊物語』『愛人/ラ・マン』『トゥー・ブラザーズ』を製作しており、”難しい題材を映画として成立させられる手腕” は既に証明済みだったため、近年は目立った実績が無くても信頼を失っていなかったのです。

ノートルダム大聖堂は1225年に完成し、800年近くパリ市民を見守ってきました。その頃に日本で建てられた現存の建築物に例えると、平等院鳳凰堂や東大寺南大門に当たります。日本でも同じ2019年に首里城が火災で焼失しましたが、ノートルダムはパリの象徴であり市民に愛されてきた大聖堂であり、首里城は1992年に再建された建物だったので、消失による哀しみは首里城の比ではないでしょう。日本で例えるなら「姫路城が全焼した」くらいにショッキングな出来事だったわけです。

観る前は正直「数年前の事故を再現した娯楽作でしょ」くらいにしか思っていなかったのですが、これは娯楽作ではなく “現場で何が起きていたのか” を映画的脚色を加えながら再現ドラマ化することに注力した映画であり、決して原因を追究したり、誰かを批判したり、感動させようとする映画ではありません。そういった恣意的な要素を極力排した演出は非常に好感が持てました。一方で市民の喪失感は脇に置き、消防士の活動にほとんどの時間を割り当てます。しかし、多くの消防士が登場する “消化活動スペクタクル” ではなく、あの規模の建物なのに上階からの消化に5人、内部の消化に5人、決死隊3人の実質3チームしか登場しないんですよね。恐らくは予算とセットの影響だと思いますが、リアリティ溢れる火災や炎や猛煙の演出がありながら、メインの消火活動がなぜか小規模… それでも巨大遺産の火災を前にした無力感と恐怖と、それでも炎に挑まなければならない消防士への敬意は十分に感じられる見ごたえある作品でした。

それと、歴史的重要物を保管する金庫の暗証番号はたった3桁なのでしょうか? しかもそれを忘れるって… でも本当に忘れてSMSで問い合わせた件は事実だそうです。

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