華麗なるギャツビー

原題 The Great Gatsby
製作年 2013
製作国 アメリカ
監督 バズ・ラーマン
脚本 バズ・ラーマン、 クレイグ・ピアース
音楽 クレイグ・アームストロング
出演 レオナルド・ディカプリオ、 トビー・マグワイア、 キャリー・マリガン、 エリザベス・デビッキ、 ジョエル・エドガートン、 アイラ・フィッシャー、 ジェイソン・クラーク、 ジャック・トンプソン、 アミターブ・バッチャン

名作小説をバズ・ラーマンらしい過剰に艶やかでゴージャスな演出で魅せる。
2つの豪邸で繰り広げられる前半の突き抜けたシーンを観るだけでも楽しめますが、中盤以降の原作小説に沿った人間模様と人物の描き方も抜かりありません。

華やかさの代名詞にもなっている「グレート・ギャツビー」ですが、これは一体何の物語なのでしょうか?
決して当時の華やかさを描いたものではなく、端的に言うと “人間の不完全さ” を描いた物語だと思っています。
その不完全さを、”階級社会による格差” や、”過去に囚われた愛” を用いて表現したのでしょう。

当時この小説はあまり売れず、わずかに2刷が発行されたのみで廃刊になっていたそうです。
フィッツジェラルドも、「熱狂的な批評をもってしても、何について書かれているか全く理解していない」と不満を漏らしていました。
しかし、第二次大戦の末期、軍人向けに無償配布されたことがきっかけで人気が出て、1950年代に評価が見直され、1960年代には必読書となった。
1925年の初版から実に20年以上経ってからのブレイクでした。
1974年にはロバート・レッドフォード主演で映画化され、本作と同じく衣装デザイン賞を受賞しています。

ジェイ・ギャツビーとはどういう人物だったのでしょうか?
映画ではさすがのレオナルド・ディカプリオが “よそよそしく” 演じているように、彼は一見すると虚飾のベールに包まれています。
しかし、ベールに包まれているのは “生い立ち” と “事業” のみで、本当の生い立ちは親しい人には打ち明けています。
一方、彼は愛に対しては正直であり真摯かつ情熱的で、正直過ぎるがために虚勢を張っているのです。
つまり犯罪者でありつつ、一途で魅力的な人物という見事な二面性を持っています。

ニック・キャラウェイはどういう人物だったのでしょうか?
温厚で誠実な人間であり、ギャツビーを傍らで見守りながら “尊敬と羨望と軽蔑の目” で見ています。
しかしギャツビーに比べると彼は “何者” でもなく、壊れにくいが情熱もありません。
そして、周囲の行動を一切止めることは無い “傍観者” です。

デイジーはどういう人物だったのでしょうか?
上流階級に生まれ、愛よりも安定的な結婚を選び、ギャツビーに再びときめいても優柔不断で、結果的に現状に留まります。
最後は逃げ出しますが、薄情というよりも上流階級ならではの “特権に守られた人” なのです。

 

過去はやり直せない。

過去はやり直せるぞ、必ずね。

ギャツビーのデイジーに対する愛は本物だったのでしょうか?
ギャツビーはデイジーと結婚生活を完全に否定し、無かったことにしようとします。
このセリフに代表されるように、時が経ち状況が変わっても、過去に囚われ続け、過去を取り戻そうとします。
その情熱は本物であるが故に、壮大で破壊的でもある。
そして、ギャツビーは上流階級への憧れを吐露します。
この瞬間、デイジーとの愛が本物なのか揺らぎ、実は “自分の出自への復讐” ではないかと疑いたくもなります。

 

彼は長い道のりを
目の前にある夢を掴もうと突き進んできた
夢が過去のものだと気づかずに
緑の灯りは象徴だった
それは年々遠のいていく輝かしい未来
あの時は逃したけれど
明日はもっと速く走り
もっと腕を伸ばそう
そうすれば いつか手に入る
だから進もう
流れに逆らう舟のように
絶え間なく過去へと押し戻されながら

この物語の登場人物は誰一人として正しい人間はおらず、情熱的で純愛のように見える愛が一方的で利己的にも見えてしまう。
ということを描きつつ、この物語は “本当に価値のある人生や人間とは何なのか?”、”どう生きるべきなのか?” を我々に突き付けているのです。
犯罪や謎解きや恋愛に騙されそうになりますが、実際は人間と人生を深く深く見つめ、我々に問いかける物語なのです。

 

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