年少日記

原題 2023
製作年 香港
製作国 年少日記/Times Still Turns the Pages
監督 ニック・チェク
脚本 ニック・チェク
音楽
出演 ロー・ジャンイップ、 ロナルド・チェン、 ショーン・ウォン、 ハンナ・チャン、 カーティス・ホー・パクリム

英題は「Time Still Turns the Pages」=「時は今もページをめくる」という意味です。英題が表すように、この映画は現在を生きる中学校教師が日記のページをめくりながら幼少期の家庭状況を思い返すことで物語が進んでいく。
彼には勉学にも音楽にも秀でた弟がいた。親は裕福でとても教育熱心だ。でもなぜか落第するほど自分だけ勉強もできず、何の才能もない。そのせいで惨めな思いをし、父親も母親も怒りっぽくなり、自分のことで夫婦げんかも絶えず、弟は自分に無関心だ。でもそんな幼少期を乗り越え、自分は今、中学校教師をしている。
この映画を観た多くの人は、きっとそう解釈したでしょう。それがこの映画の優れた点であり、解釈が間違っていたことを後に知ることになる観客へのインパクトは絶大です。

 

正直に言うと最初から分かっていた
僕はなりたい大人になれないって

描かれるのは、苛烈な受験競争が及ぼす青少年への影響で、東アジアでは良く描かれる題材です。ではこの映画がなぜ優れているかというと、虐待を受けた少年がどのように成長し、どのような大人になったかを描いていると思わせつつ、途中で主人公が違っていたことに気づき、実は父親以外が被害者で、本当は “皆が壊れていた” ことを描いているからです。才能もあり幸福に生きる条件が揃っていたにも関わらず、行き過ぎた思想と教育によって別の形で壊され、ある時から被害者になってしまう。そのトラウマを引きずり、彼は夫婦生活も破綻し、学校でも良い先生にはなれていない。しかし、過去の経験と想いを糧に、贖罪として兄の夢に近づけるよう悩みながら努力する。それが “救える命を救う” ことであり、その原動力となるのが “日記” なのです。

脚本のアイデアはチェク監督が大学時代に親友を失った経験に基づいており、この出来事をきっかけにチェク監督は香港の若者に蔓延する絶望感について深く考えるようになりました。また、この映画の兄のように自身も学業が苦手で負け犬だと感じていましたが、映画に携わることで初めて自分の居場所を見つけ、やがてこの作品に繋がったそうです。

 

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