終わりの鳥

原題 Tuesday
製作年 2024
製作国 イギリス・アメリカ
監督 ダイナ・O・プスィッチ
脚本 ダイナ・O・プスィッチ
音楽 アンナ・メレディス
出演 ジュリア・ルイス=ドレイファス、 ローラ・ペティクルー、 リア・ハーベイ、 アリンゼ・ケニ(声)

“死を司るもの(=Death)” をコンゴウインコで表現する発想と、それを映像化してた勇気だけで評価のAを1つ追加。ただ、乗り物の “箱” は素晴らしかったのに、走り出すとひたすらオフロードの脚本を走り続け、気づけばいつの間にかゴールしていたという印象です。とんでもない映画になりえる発想でしたが、本作がデビュー作のプスィッチ監督が真っすぐなレールを敷けなかったんだと思います。

原題は「Tuesday」で子供の名前ですが、海外のポスターだと母親しか写っていないように、この映画の主人公は母親です。まずこの時点でテーマがぼやけてしまいましたが、本来のテーマは「死を受け入れること」であり、それは “死にゆく者”“残された者” 両方にとって重大な問題です。コンゴウインコは “死を司るもの” であり、すべての生き物の死の間際に現れ、そっと翼をかざすことで死が訪れます。また、死への恐怖心に比例して小さくなったり大きくなったりします。もしコンゴウインコがいないと、怪我や病で死ぬべき生き物は死ぬことができません。死が来ないことは幸福かというと、決してそうではないことが分かります。

母親のゾラは娘が死ぬことを拒絶し、コンゴウインコを叩いて焼き鳥にして食べてしまいます。本当はここからが脚本の見せ所でしたが、海へ謎の小旅行に出かけたりと、かなりグダグダでした。本来であればコンゴウインコの力を取得した母親は世界中で死を求める人の声が聞こえ、死を受け入れたのが娘だけではないと知って苦悩し、“親の愛” と “Death(コンゴウインコ)としての役割” の狭間でもっと葛藤するべきでした。娘のチューズデーは悟りを開いた達観者のような描き方でしたが、本来であれば簡単に死を受け入れず、母を憎み、世の中を憎み、やってきたコンゴウインコを憎み、若くして死ぬことの不公平さを憎みながら最後は安らかに死を受け入れる。それくらい、このテーマは深く観客の心に刺さる描き方ができたはずで、傑作になる可能性も秘めていたのです。「それをやってしまうと他の映画と同じで、映画的な悲劇を押し付けるだけでは?」という指摘もあるでしょうが、この映画にはコンゴウインコという強烈なアイコンがいるので、決して他の映画と同じにはなりません。

神はいない
人間が考えるような神は
だが来世はある
おまえの残す響きや痕跡、思い出…
それがあの子の来世だ
お前の生き方があの子を生かすことになる

結局、利口な娘が「私は死ぬんだからちゃんと受け入れてよ」と悩める母に優しく諭し、”母親が精神的に成長する” という「え、そっちなの?」という展開になってしまいました。けれども最後にコンゴウインコが残す言葉は重要で、“残された者” の生き方が死者の在り方を決めるというのは、その通りかもしれません。

監督のダイナ・オニウナス・プスィッチはクロアチア出身で現在はロンドンを拠点にする映画製作者で、この作品が長編デビュー作ですが、2015年の短編『The Beast/Zvjerka』でも今回と同じような設定を描いています。100歳の母ナダと、母を介護する75歳の娘ヴェラのところに一匹のコウモリがやってきて、その存在によって母が生きる力を取り戻す奇妙な20分の物語です。奇抜な展開も20分ならテンポよく見せることができますが、今回のように110分を持たせる脚本力が今後の課題かもしれませんね。でも期待しています!

tuesday2