| 原題 | Upon Entry |
|---|---|
| 製作年 | 2023 |
| 製作国 | スペイン |
| 監督 | アレハンドロ・ロハス、 フアン・セバスティアン・バスケス |
| 脚本 | アレハンドロ・ロハス、 フアン・セバスティアン・バスケス |
| 撮影 | フアン・セバスティアン・バスケス |
| 出演 | アルベルト・アンマン、 ブルーナ・クッシ、 ベン・テンプル、 ローラ・ゴメス |
140分超えが普通になった現代の映画において、74分は隙間時間と言えるでしょう。タイトルロールとエンドロールを飛ばせば70分です。わずか70分でハングリーなあなたのお腹を満たしてくれる作品ですが、決してファーストフードではありません。1400円(140分)の価値を感じられないランチコースより、700円(70分)で十分満足できる手作りランチがあれば、あなたは迷わずそれを選ぶべきです。まるで英語サイトを直訳したかのような出だしで書きましたが、もちろん自分で書いています。
登場人物が限定されたワンシチュエーション映画は総じて短いですが、どれも工夫が凝らされていて展開の巧みさに唸らされますよね。この作品はタイトルから分かるように “どこでトラブルになるか” は明確(もちろん空港の入国審査!)で、後は “なぜトラブルになったのか?” を観客にうまく見せれば勝ちですが、入国審査なので尋問というシチュエーションによって自然と “見えない状況が少しずつ明らかになっていく様子” を描くことができるのです。一生懸命頭をしぼって気の利いた会話をひねり出す必要もありません。質問と回答だけで良いのです。セリフや演出で緊張感を作り出す必要もありません。入国審査なので、自然と緊張感が漂うのです。設定段階で様々なことを省けるお膳立てができているので、後は質疑応答の内容と芸達者で一般人のような俳優を割り当てれば十分鑑賞に堪えうる娯楽作の出来上がりです。
と素人が考えるほど簡単ではないと思いますが、「自分は “真っ白” で何の問題もない」と考えているカップルを、なぜ審査官が厳しく尋問しているか徐々に分かってくる展開が非常に秀逸なのです。「問題なんか無い」と考える永住権希望者と、「問題があるのではないか」と疑うことが職務である審査官の戦いであり、その “非対称性” を巧みに生かした脚本が面白い。これは映画用に作り出したフィクションではなく、入国審査って本当にこのような進め方をするそうです。
ちなみに審査官のローラ・ゴメスさんは、『ラ・コシーナ』の厨房でお盆をひっくり返していた方ですね。
