ブラックバッグ

原題 Black Bag
製作年 2025
製作国 アメリカ
監督 スティーヴン・ソダーバーグ
脚本 デヴィッド・コープ
音楽 デヴィッド・ホームズ
出演 マイケル・ファスベンダー、 ケイト・ブランシェット、 マリサ・アベラ、 トム・バーク、 ナオミ・ハリス、 レゲ=ジャン・ペイジ、 ピアース・ブロスナン

近年のスティーブン・ソダーバーグ監督作にしては珍しく、この映画は面白い! イギリス諜報機関が内部スパイを探す映画の最高峰は『裏切りのサーカス』ですが、そのハードルを2段階下げてスタイリッシュな娯楽作に仕上げた映画がこの作品です。ソダーバーグ監督は非常に多作ですが、デビュー作の『セックスと嘘とビデオテープ』と『イギリスから来た男』以外に感銘を受けたものはありません。でもこの作品は興行的には小さいものの、騒がしいオーシャンズシリーズよりも落ち着いて楽しめる程良い作品かもしれません。

ソダーバーグ監督は不思議な人で、心理を深く掘り下げたサスペンスドラマを作れる一方、そんなことはとっくに忘れ去られ、90年代後半~2000年代前半の娯楽大作で記憶されています。しかし、凡作以下の作品も数多く残すので、「彼は何者なのか?」一向に分かりません。野球に例えると、①天才打者としてマイナー経験なしにいきなりメジャーデビューするも伸び悩み、②それでもパワーを付けてトリプルスリーを数回達成するものの、③キャリアの2/3は “メンドーサ・ライン” にも届かない並みの選手です。④しかしピークを過ぎてもしぶとく生き残り、忘れられたベテランとなった今も稀に優れたシーズンを送るのです。

映画の話に戻りますが、この映画は表向きはスパイ映画ですが、中身は「愛する人をどこまで信じることができるか?」を描いた作品です。超簡単に言うと「愛は心理戦だが浮気はNG」です。一般的な企業では社内結婚が当たり前ですが、私は “絶対に社内結婚はできない派” です。それは “相手を論理的にねじ伏せてマウントを獲ることを日常とするコンサルティング業界” にいたからではありません。もちろん日常的に “いかに自分が正しいか” を主張するコンサルタントが恋人だったら嫌ですが、別の業種でも絶対に社内結婚はしません。なぜなら情報が筒抜けだし、家でも会社の話など聞きたくないからです。そして最も社内結婚してはいけない業種が諜報機関でしょう。でもジョージとキャスリンは、部下を家でもてなすと相手が震え上がるほど、一見すると完璧な夫婦です。「じゃあ本当に疑義の無い夫婦なのか?」が軸となるので、他の主要な登場人物は自然と2組の社内カップルになります。そして案の定、諜報機関の社内恋愛において括約筋を活用したクラリサを除いて秘密は何一つ隠し通せないのです。(噓発見器のシーンはスタイリッシュで緊張感に包まれつつ笑いを取るというサイクルヒット級の離れ業でした)

 

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