ナイトクローラー

原題 Nightcrawler
製作年 2014
製作国 アメリカ
監督 ダン・ギルロイ
脚本 ダン・ギルロイ
音楽 ジェームズ・ニュートン・ハワード
出演 ジェイク・ジレンホール、 レネ・ルッソ、 リズ・アーメッド、 ビル・パクストン、 アン・キューザック

主人公のルイス・ブルームとは何者なのか? 最初は産業廃棄物から高級サイクルまで手当たり次第に窃盗をして生計を立てている軽犯罪者で、大物感はまるでない。サイコパス的な狂気も知的犯罪をこなせる知性もなく、とても映画の主人公になるようなキャラクターではありません。でも彼はなぜかこの映画で主役を務めているようです。ギョロっとした目玉に感情の乏しい表情で、何かちょっと薄気味悪いですね。これから彼は社会の犠牲者となり、サイコパスな犯罪者へと変貌していくのかもしれません。それなら映画の主人公に最適です。しかし、彼は現代の若者にありがちな根拠なき自己肯定感に溢れ、やたらと向上心や自己顕示欲を見せます。そして窃盗した高級サイクルを元手にカメラを手に取ります。

映像によって人間が欲望を生み出し
欲望によって人間が映像を生み出す

あとは警察無線を傍受して同業者をいち早く出し抜き、倫理なき過激な映像をカメラに収めれば勝ちです。放送コードは無視され、過激さと新鮮さが重要です。そうすれば、必ずどこかのメディアが映像を買ってくれるのです。なぜならテレビで流せば視聴者が食いつくから… 数日前にデヴィッド・クローネンバーグ監督のカルト的作品『ヴィデオドローム』を観ましたが、実はこれとまったく同じテーマなのです。もしあなたが事故や犯罪によって血まみれで路上に倒れていたら、その姿を “是非とも観たい” 視聴者が世の中にたくさんいて、運が良ければテレビカメラに収められて彼らを喜ばすことができるのです。数分後にあなたが息を引き取るとしても、恨めしい視線でレンズを見つめたとしても、そんなことは視聴者の欲望に1mmも作用しません。

ブルームにとって、社会的に成功することは生涯の目標です。もともと窃盗に手を染めているように、息も絶え絶えな重傷者を助けることもせずカメラに収めることは彼の倫理観に何の影響も及ぼしません。自分が出世し、社会的な階段を1段上るごとに別の誰かが苦しむとしても、良心の呵責は微塵もありません。それが資本主義における競争社会であり、需要を生み出し続けることが資本主義で生き残る条件なのです。だからブルームはサイコパスでも何でもなく、資本主義社会においては “当たり前の人” に過ぎません。

というように、この映画はメディア社会と資本主義社会を痛烈に批判した作品です。使い古されたテーマだとか、描き方がどうとか、深さが足りないとか、主人公のキャラクターが暗いとか、周辺の批判は幾らでもできますが、テーマ自体の批判はできません。なぜならそれは暗黙の了解であり、事実だからです。

なぜこの映画に突然レネ・ルッソが?と思ったら、監督/脚本のダン・ギルロイの奥様なんですね。彼女が一線を超えた描写がない理由が分かりました。

 

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