| 原題 | Tin Cup |
|---|---|
| 製作年 | 1996 |
| 製作国 | アメリカ |
| 監督 | ロン・シェルトン |
| 脚本 | ジョン・ノーヴィル、 ロン・シェルトン |
| 音楽 | ウィリアム・ロス |
| 出演 | ケビン・コスナー、 レネ・ルッソ、 ドン・ジョンソン、 チーチ・マリン、 リンダ・ハート |
監督は『さよならゲーム』『ハード・プレイ』『タイ・カッブ』など、スポーツ映画を得意とするロン・シェルトン。彼は大学まで野球とバスケットボールに打ち込み、ボルチモア・オリオールズ傘下のマイナーリーグで5年間プレイしてAAAまで上がった本格的な選手でした。元プロ選手だっただけに「ファン視点から作られた感動作ばかりのスポーツ映画」が大嫌いで、スター選手ではない主人公達に光を当ててきました。(タイ・カッブはスター選手ですが人間的には大いに欠陥がありました) この『ティン・カップ』も元野球少年で、今はしがない片田舎のゴルフレンジで働いています。“一流になれる素質を持つ誰もが一流になれるとは限らない” という、分かりやすいケーススタディのような人生を送っており、まさにロン・シェルトンの映画にぴったりの人物です。
だからこの映画は “最後に勝つ” 類の感動作にはなりません。ロン・シェルトン監督の映画で勝つことは重要ではなく、いかにプレイするか、ひいては “いかに生きるか” が重要なのです。なんてことの無いストーリーを、魅力的な登場人物と展開で分かりやすい娯楽作 兼 ラブストーリーに仕立て上げる手腕はお見事です。ケビン・コスナーもそれまで順風満帆だった『パーフェクト・ワールド』以降、『ワイアット・アープ』『ウォーター・ワールド』でつまづき、この作品以降も『ポストマン』『メッセージ・イン・ア・ボトル』『ラブ・オブ・ザ・ゲーム』と低評価の作品が続きます。そんな中、『ティン・カップ』は(そこまで評価は高くないですが)十分に楽しめる作品で、これ以降だと『13デイズ』で最後に眩く輝き、大スターだった経歴は終わるのです。
なお、この映画のストーリーを投影したようなジャン・ヴァン・デ・ヴェルデというフランス人のプロゴルファーがいます。彼はこの映画の3年後、1999年の全英オープンで伝説の敗者となりました。その時のライブ放送を見ていたのでよく覚えています。10年のプロ生活でわずか1勝の無名選手だった彼は、全英オープンの最終日、最終ホールで2位に3打差をつけて首位に立っていました。残り1ホールで3打差というのは独走状態であり、プロであれば “絶対的安全圏” です。それがティーショットで隣のホールに打ち込み、無理した2打目は観客席に当たり、更に無理して打った3打目はクリーク(小川)に落ちます。諦めて1打罰で打ち直しすると思いきや、彼は靴と靴下を脱いで、なんと小川に入って行ったのです。「いや、絶対無理でしょう」と誰もが思った祈りが通じたのか、彼は打つ瞬間に我に返り、ボールを打つことなく小川から出て1打罰で打ち直したのです。そして結局優勝できませんでした。もしクリークから打っていれば、本物のロイ・マカヴォイとして記憶に残ったでしょう。しかし後に、「グリーンが狙えるなら狙う。安全策で刻むときはクラブを置く時だ」とまで言ったヴァン・デ・ヴェルデは、映画の主人公のように歴史に残る敗者として人々の記憶に残されているのでした。
